問題と目的




青年期は人間関係の中でも友人との関係が最も重要とされる時期である。 小学校高学年以降の子どもたちは親と過ごす時間が減少し、代わって友人と過ごす時間が多くなってくる。 男子・女子ともに「悩みを打ち明けられる相手」として同性の友人を上げる割合が高くなり、 青年期には共有できるなにかを求めて友人と過ごし、共有できることで自己認識を果たすようになるといえる。 川原・山崎(1996)も述べているように、友人とつながりを持ち、その友人との間に交流があり、 かつそれが良好な友人関係であることは、「親からの精神的自立」が発達上の一つの特徴である 青年期前期での社会的欲求の充足には不可欠なことである。中学生を対象とした中元(1990)の研究では、 学校生活のなかで楽しいのは「友だちと気が合い、話がはずむとき」であり、学校生活が楽しい理由は 「同性の友だち」がいるからという回答が圧倒的に多いことが示されている。このことからも、 学校生活を送る上で友人との関係が重要であると考えることができる。 また、榎本(1999)は、青年期の友人関係の性差について、男子はライバル意識や葛藤を女子より強く感じ、 女子は友人との信頼感や友人にどう思われているか、について男子より感じているとしている。 従って、友人とのつきあい方には、性差があることが予想される。
友人との関係が青年期に重要なことであると同じように、青年期前期の者にとって、 学校生活に適応感を持つことができているか、ということも学校生活を充実したものとするために 重要なことであると考えられる。古市・玉木(1994)、内藤ら(1986)によると、 学校生活の適応感と友人関係とは関係があるとされている。
また、古野・藤原(2003)は、つきあいの深さと相手との心理的距離のとり方の両側面から見て、 アイデンティティが確立している者は、確立していない者と比較して安定した友人関係を持てるとしている。
以上から、友人とのつき合い方が学校生活の適応感にどのように影響しているのかを検討することを 本研究の目的とする。また、アイデンティティの確立が友人とのつき合い方と学校生活の適応感との関係にどの程度影響しているのかについても検討することとする。そして、学校生活における友人との関係を対象とするため、本研究で扱う友人とは同じ学校の同性の友人とする。



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