結果



1.各尺度の因子分析の結果

2.開示者のエゴグラム特徴と自己開示動機

3.開示者の自己開示動機と被開示者のエゴグラム特徴

4.開示者のエゴグラム特徴と被開示者のエゴグラム特徴

5.開示者のエゴグラム特徴における、自己開示動機と被開示者のエゴグラム特徴



1.各尺度の因子分析の結果

@被開示者のエゴグラム尺度の因子分析結果

 被開示者のエゴグラム尺度について因子分析を行った。全40項目について主因子法・バリマックス回転による因子分析を行った。因子数は固有値や解釈の可能性から5因子を採用した。因子負荷量が.35以下を示すもの、また複数の因子に負荷する3項目は分析から除外し、全37項目で再度因子分析を行った。
 第1因子は、「18. 人に説教や批判をすることがある」というような、自分の価値観や目標に順応させようとして他者の行動や思考を支配したり、他者に対して教育・指導的な態度を取る傾向を表す「UCP」的特徴が見られたことから“UCP”因子とした。第2因子は、「11. 落ち込んでいる人を心から慰める」というような、他者を受容し肯定したり他者を大切に扱い慈しむ傾向を表す「UNP」的特徴が見られたことから、“UNP”因子とした。第3因子は、「12. 状況判断が的確にできる」というような、外界の状況に対し客観的・合理的な判断や処理を行う傾向を表す「UA」的特徴が見られたことから“UA”因子とした。第4因子は、「24. よくはしゃいだり騒いだりする」というような、感情や欲求を素直に表現したり、したいことを自由に楽しむ傾向を表す「UFC」的特徴が見られたことから“UFC”因子とした。第5因子は、「16.したいことや嫌なことをがまんすることが多い」というような、他者に対して承認や保護を求めたり、依存・従属をするなど無力な子どものような状態になる傾向を表す「UAC」的特徴が見られたことから“UAC”因子とした。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバック(Cronbach)のα係数を算出したところ、第1因子はα=.83、第2因子はα=.83、第3因子はα=.80、第4因子はα=.81、第5因子はα=.83を示した。また、尺度全体のα係数を算出したところ、α=.65を示した。尺度全体のα係数は若干低いものの、各因子のα係数が充分に高いため、信頼性の高い因子構造であることが示されたと言える。
 本研究では、それぞれの因子について項目得点を合計したものを、「UCP得点」、「UNP得点」、「UA得点」、「UFC得点」、「UAC得点」とし、その後の分析を行った。

A開示者のエゴグラム尺度の因子分析結果

 開示者のエゴグラム尺度について因子分析を行った。全40項目について主因子法・バリマックス回転による因子分析を行った。因子数は、固有値や解釈の可能性から5因子とした。
 第1因子は、「26. 他人を思い通りにしようとする傾向がある」というような、自分の価値観や目標に順応させようとして他者の行動や思考を支配したり、他者に対して教育・指導的な態度を取る傾向を表す「UCP」的特徴が見られたことから“UCP”因子とした。第2因子は、「28. 困っている人を見ると、なんとしても助けようと思う」というような、他者を受容し肯定したり他者を大切に扱い慈しむ傾向を表す「UNP」的特徴が見られたことから、“UNP”因子とした。第3因子は、「25. 問題を合理的に解決する」というような、外界の状況に対し客観的・合理的な判断や処理を行う傾向を表す「UA」的特徴が見られたことから“UA”因子とした。第4因子は、「「35. 面白いことを言っていつも人を笑わせる」というような、感情や欲求を素直に表現したり、したいことを自由に楽しむ傾向を表す「UFC」的特徴が見られたことから“UFC”因子とした。第5因子は、「9. 命令や指図に反対できない」というような、他者に対して承認や保護を求めたり、依存・従属をするなど無力な子どものような状態になる傾向を表す「UAC」的特徴が見られたことから“UAC”因子とした。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバック(Cronbach)のα係数を算出したところ、第1因子はα=.81、第2因子はα=.82、第3因子はα=.81、第4因子はα=.81、第5因子はα=.85を示した。また、尺度全体のα係数を算出したところ、α=.78を示した。このことから、信頼性の高い因子構造であることが示されたと言える。
 本研究では、それぞれの因子について項目得点を合計したものを、「UCP得点」、「UNP得点」、「UA得点」、「UFC得点」、「UAC得点」とし、その後の分析を行った。

B自己開示動機尺度の因子分析結果

 開示者の自己開示動機尺度について因子分析を行った。全12項目について主因子法・バリマックス回転による因子分析を行った。因子数は、固有値やスクリープロットから2因子解と3因子解を検討し、因子の解釈可能性から3因子とした。因子負荷量が.35以下を示すもの、また複数の因子に高い負荷量を示す5項目を削除し全7項目で再度因子分析を行った。
 第1因子に負荷が高いのは、「11.重大な決断を迫られ、迷っているとき」といった、重大な決断や未知の状況を前にして自分の考えがうまくまとまらないときや不安を感じるときに、他者に話を聞いてもらうことや、他者からの意見を聞くことで自分の考えをまとめたいという動機と言える。そこで、第1因子を“相談的自己開示動機”因子とした。第2因子に負荷が高いのは、「7.悲しみやつらさに打ちひしがれているとき」といった、つらいときや悩みを抱えているときなどに、苦しい胸のうちを誰かにわかってほしいという動機といえる。そこで、第2因子を“理解・共感追求的自己開示動機”因子とした。第3因子に負荷が高いのは、「3.とても腹が立つことがあり、胸の中にしまっておけないとき」といった、うれしいことがあったときや反対に腹が立つことがあって興奮しているときに、誰かに話すことですっきりしたいという動機といえる。そこで、第3因子を“情動解放(カタルシス)的自己開示動機”とした。
 各因子の内的整合性を検討するため、クロンバック(Cronbach)のα係数を算出したところ、第1因子はα=.69、第2因子はα=.82、第3因子はα=.62を示した。また、尺度全体のα係数を算出したところ、α=.77を示した。第1因子と第3因子が若干低いが、尺度全体のα係数が高い値であるため、信頼性が確認できたと言える。
 本研究では、それぞれの因子について項目得点を合計したものを、「相談的自己開示動機得点」「理解・共感追求的自己開示動機得点」「情動解放的自己開示動機得点」とし、その後の分析を行った。


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2.開示者のエゴグラム特徴と自己開示動機

   開示者の各エゴグラム特徴によって、自己開示動機が変わるのかどうかを明らかにするため、前述した因子分析で得られた5つの開示者のエゴグラム因子得点(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)と「相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」の3つの自己開示動機因子得点との相関を求めた。その結果、「相談的自己開示動機」因子では、「UNP」因子との間に5%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.119,p<.05)。「理解・共感追求的自己開示動機」因子では、「UNP」因子との間に0.1%水準で弱い正の相関が(r=.292,p<.001)、「UFC」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が (r=.159,p<.01)、「UAC」因子との間に5%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.122,p<.05)。「情動解放的自己開示動機」因子では、「UCP」因子との間に5%水準でごく弱い正の相関が(r=.140,p<.05)、「UNP」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関(r=.141,p<.01)が、「UFC」因子との間に0.1%水準で弱い正の相関が認められた(r=.276,p<.001)。
 これらの結果から、他者との親密で肯定的な関係を大切にするという特徴を持つ「UNP」得点が高いほど、他者からの意見を聞くことで自分の考えを整理したいという動機である「相談的自己開示動機」が高いことが明らかとなった。つまり、他者との親密で肯定的な関係を大切にしている開示者は、自分の考えをまとめたいという動機から自己開示を行っているということである。また、他者との親密で肯定的な関係を大切にする特徴を持つ「UNP」得点、感情や欲求を素直に表す特徴を持つ「UFC」得点、そして、他人の気持ちに配慮して人に合わせる特徴をもつ「UAC」得点が高いほど、つらいときや悩みを抱えているときなどに、苦しい胸のうちを誰かにわかってほしいという動機である「理解・共感追求的自己開示動機」が高いことが明らかとなった。つまり、親密で肯定的な関係を大切にする開示者や、感情や欲求を素直に表す開示者、そして、他者に承認や保護を求める開示者は、相手に理解・共感して欲しいという動機から自己開示を行っているということである。さらに、開示者の感情や欲求を素直に表す特徴を持つ「UFC」得点、開示者の親切で人を思いやるという特徴を持つ「UNP」得点、信念を持って積極的に自己主張し、指導的な態度を取る特徴を持つ「UCP」得点が高いほど、誰かに話すことですっきりしたいという動機である「情動解放的自己開示動機」が高いことが明らかとなった。つまり、感情や欲求を素直に表す開示者や、他者との肯定的な関係を大切にする開示者、そして、積極的に自己主張する開示者は、誰かに話すことですっきりしたいという動機から自己開示を行っているということである。また、開示者の現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処をする特徴を持つ「UA」得点においては、どの自己開示動機においても、関連が見られなかった。

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3.開示者の自己開示動機と被開示者のエゴグラム特徴

   開示者の自己開示動機によって被開示者のエゴグラム特徴に変化があるのかどうかを明らかにするため、因子分析で得られた「相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」の3つの自己開示動機因子得点と「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」の5つの被開示者のエゴグラム因子得点の相関を求めた。その結果、「相談的自己開示動機」因子では、「UNP」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が(r=.154,p<.01)、「UA」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.186,p<.01)。また、「理解・共感追求的自己開示動機」因子では、「UNP」因子との間に0.1%水準で弱い正の相関が(r=.356,p<.001)、「UA」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.183,p<.01)。「情動解放的自己開示動機」因子では、「UNP」得点との間に0.1%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.220,p<.001)。
 これらの結果から、他者からの意見を聞くことで自分の考えをまとめたいという動機である「相談的自己開示動機」得点が高い開示者は、他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高い被開示者、現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処ができる特徴を持つ「UA」得点が高い被開示者に対して自己開示することが明らかとなった。つまり、自分の考えをまとめたいという動機で自己開示を行っている開示者は、他者を受容し、肯定するパーソナリティ特徴や冷静で的確な判断をするパーソナリティ特徴を持つ被開示者に対して自己開示を行っているということである。また、つらいときや悩みを抱えているときなどに、苦しい胸のうちを誰かにわかってほしいという動機である「理解・共感追求的自己開示動機」得点が高い開示者は、「相談的自己開示動機」と同じく、他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高い被開示者や、現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処ができる特徴を持つ「UA」得点が高い被開示者に対して自己開示することが明らかとなった。その中でも、親切で人を思いやり、他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が、「理解・共感追求的自己開示動機」において、大きく影響していることが示された。つまり、自分の気持ちや考えを理解・共感してほしいという動機で自己開示する開示者は、他者を受容・肯定するパーソナリティ特徴を持つ被開示者に自己開示を行っているということである。そして、誰かに話すことですっきりしたいという動機である「情動解放的自己開示動機」得点が高い開示者は、親切で人を思いやり、他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高い被開示者に対して自己開示することが明らかとなった。つまり、誰かに話すことですっきりしたいという動機から自己開示する開示者は他者に対して受容的・肯定的なパーソナリティ特徴を持つ被開示者に自己開示を行っているということである。

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4.開示者のエゴグラム特徴と被開示者のエゴグラム特徴

   開示者のエゴグラム特徴によって、被開示者の特徴が変わるのかどうかを明らかにするため、前述した因子分析で得られた「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」の5つの開示者のエゴグラム因子得点と「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」の5つの被開示者のエゴグラム因子得点との相関を求めた。その結果、開示者の「UNP」因子において、被開示者の「UNP」因子との間に0.1%水準で弱い正の相関が(r=.390,p<.001)、被開示者の「UA」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.144,p<.01)。開示者の「UFC」因子においては、被開示者の「UNP」因子との間に1%水準で弱い正の相関が(r=.210,p<.01)、被開示者の「UFC」因子との間に1%でごく弱い正の相関が認められた(r=.170,p<.01)。開示者の「UAC」因子においては、被開示者の「UCP」因子との間に1%水準でごく弱い正の相関が(r=.171,p<.01)、被開示者の「UAC」因子との間に5%水準でごく弱い正の相関が認められた(r=.116,p<.05)。
 これらの結果から、他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高い開示者は、被開示者を、他者を受容・肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高く、冷静で的確な判断や合理的な対処ができ対人場面でも高い現実適応能力を発揮する特徴を持つ「UA」得点が高い人物と考え、自己開示していることが示された。また、感情や欲求を素直に表す特徴を持つ「UFC」得点が高い開示者は、被開示者を、親切で人を思いやり他者を受容し肯定する特徴を持つ「UNP」得点が高く、感情や欲求を素直に表す特徴を持つ「UFC」得点が高い人物と考え自己開示していることが示された。そして、他人の気持ちに配慮して人に合わせ、従順で他者との和を大切にした行動をする特徴を持つ「UAC」得点が高い開示者は、被開示者を、信念を持って積極的に自己主張し、指導的な態度を取る特徴を持つ「UCP」得点が高い人物、そして、従順で他者との和を大切にした行動をする特徴を持つ「UAC」得点が高い人物と考え自己開示を行っていることが明らかとなった。一方で、信念を持って積極的に自己主張し、他者を導こうとして指導的な態度を取る特徴を持つ「UCP」得点や、現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処ができ、対人場面でも高い現実適応能力を発揮する特徴を持つ「UA」得点は、どの被開示者のエゴグラム特徴においても、関連が見られなかった。

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5.開示者のエゴグラム特徴における、開示動機と被開示者のエゴグラム特徴

  開示者の各エゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)得点について平均値を基準にして上位下位に分け、それぞれH群L群とした。次に、開示者の各エゴグラム特徴の高さによって、開示動機や被開示者のエゴグラム特徴に差があるのかを明らかにするために、開示者の各エゴグラム特徴(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)の高さを独立変数、開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)と被開示者のエゴグラム特徴(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)のそれぞれを従属変数としたt検定を行った。開示者の各エゴグラムにおける結果を以下に示す。

@開示者UCP

 開示者のUCP得点のH群L群を独立変数、それぞれの開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、「情動解放的自己開示動機」において、開示者のUCP得点のH群とL群の平均値の間に5%水準で有意な差がみられた(t(340)=2.05,p<.05)。このことから、他者をより完全な状態へ導こうとして教育・指導的な態度を取り、自己の価値観や目標に順応させようとして他者の行動や思考を支配する「UCP」得点の高い開示者は、「UCP」得点が低い開示者に比べて心の中に充満した情動を発散させるためである「情動解放的自己開示動機」の得点が高いことが明らかとなった。
 また、開示者のUCP得点のH群L群を独立変数、被開示者のそれぞれのエゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)を従属変数としたt検定を行ったが、有意な差はみられなかった。つまり、開示者のUCP得点と被開示者のエゴグラム特徴との間には、関係がみられなかったということである。

A開示者UNP

 開示者のUNP得点のH群L群を独立変数、それぞれの開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、「理解・共感追求的自己開示動機」において、開示者のUNP得点H群とL群の平均値の間に0.1%水準で有意な差が見られた(t(340)=4.57,p<.001)。つまり、親切で人を思いやり、他者との肯定的で親密な関係を大切にする「UNP」得点の高い開示者は、「UNP」得点が低い開示者に比べて相手に自分を理解してもらうための「理解・共感追求的自己開示動機」の得点が高いことが明らかとなった。
 また、開示者のUNP得点のH群L群を独立変数、被開示者のそれぞれのエゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、被開示者のUNP得点において、開示者のUNP得点H群とL群の平均値の間に0.1%水準で有意な差がみられた(t(340)=5.93 p<.001)。被開示者のUA得点においても、1%水準で有意な差がみられた(t(340)=3.15,p<.01)。つまり親切で人を思いやり、他者との肯定的で親密な関係を大切にする「UNP」得点の高い開示者は、「UNP」得点が低い開示者に比べて、同じく親切で人を思いやり、他者との肯定的で親密な関係を大切にする「UNP」的特徴と、現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処ができ、対人場面でも高い現実適応能力を発揮する「UA」的特徴を持つ開示者に自己開示していることが明らかとなった。

B開示者UA

 開示者のUA得点のH群L群を独立変数、それぞれの開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)を従属変数としたt検定を行ったが、有意な差はみられなかった。つまり、現実の状況を客観的にとらえ、冷静で的確な判断や合理的な対処ができ、対人場面でも高い現実適応能力を発揮する開示者のUA的特徴は、開示動機に影響しないことが明らかとなった。
 また、開示者のUA得点のH群L群を独立変数、被開示者のそれぞれのエゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)を従属変数としてt検定を行ったが、有意な差はみられなかった。よって、他者・外界の状態を観察・分析・統合し、外界の状況に対し客観的・合理的な判断や処理を行う「UA」的特徴を持つ開示者と、被開示者のエゴグラムとは有意な関係を見出すことができなかった。

C開示者UFC

 開示者のUFC得点のH群L群を独立変数、それぞれの開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)を従属変数としてt検定を行った。その結果、「情動解放的自己開示動機」において、開示者のUFC得点H群とL群の平均値の間に1%水準で有意な差がみられた(t(340)=2.96,p<.01)。このことから、感情や欲求を素直に表す特徴をもつ「UFC」得点の高い開示者は、「UFC」得点が低い開示者に比べて心の中に充満した情動を発散させるための「情動解放的自己開示動機」の得点が高いことが明らかとなった。
 また、開示者のUFC得点のH群L群を独立変数、被開示者のそれぞれのエゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、被開示者のUNP得点において、開示者のUFC得点H群とL群の平均値の間に1%水準で有意な差がみられた(t(340)=3.30 p<.01)。また、被開示者のUFC得点においても、0.1%水準で有意な差がみられた(t(340)=3.58,p<.001)。この結果から、衝動的欲求や感情に喚起された活動は抑制されず容易に発言する「UFC」得点の高い開示者は、「UFC」得点が低い開示者に比べて、同じように「UFC」的特徴と持つ被開示者と、親切で人を思いやり、他者との肯定的で親密な関係を大切にする「UNP」的特徴的特徴を持つ被開示者に自己開示していることが明らかとなった。

D開示者UAC

 開示者のUAC得点のH群L群を独立変数とし、それぞれの開示動機(相談的自己開示動機」、「理解・共感追求的自己開示動機」、「情動解放的自己開示動機」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、「理解・共感追求的自己開示動機」において、開示者のUAC得点H群とL群の平均値の間に5%水準で有意な差がみられた(t(340)=2.28,p<.05)。この結果から、他者に承認や保護を求め、他人の気持ちに配慮して人に合わせ従順な行動をする特徴をもつ「UAC」得点の高い開示者は「UAC」得点が低い開示者に比べて相手に自分を理解してもらうための「理解・共感追求的自己開示動機」の得点が高いことが明らかとなった。
 また、開示者のUAC得点のH群L群を独立変数、被開示者のそれぞれのエゴグラム(「UCP」、「UNP」、「UA」、「UFC」、「UAC」)を従属変数としたt検定を行った。その結果、被開示者のUCP得点において、開示者のUAC得点H群とL群の平均値の間に1%水準で有意な差がみられた(t(340)=2.90 p<.01)。この結果から、他者に承認や保護を求め、他人の気持ちに配慮して人に合わせ従順な行動をする「UAC」得点の高い開示者は、「UAC」得点が低い開示者に比べて、他者をより完全な状態へ導こうとして教育・指導的な態度を取り、自己の価値観や目標に順応させようとして他者の行動や思考を支配する「UCP」的特徴的特徴を持つ被開示者に自己開示をしていることが明らかとなった。

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