社会的スキルとは、人間関係を形成し、維持するために必要とされる要因の一つで、一般に、@社会的状況において仲間から受け入れられる行動、A強化を受ける確率を最大にし、罰や消去の随伴性を減少させるような状況に依存した社会的行動、Bある状況で重要な社会的結果を予測する、社会的妥当性のある行動である(Gresham, 1986; Elliot & Gresham, 1987)と定義され、また菊池(1988)によれば、社会的スキルは「対人関係を円滑にすすめる具体的行動」と定義されている。
つまり、Greshamや菊池の定義によれば、社会的スキル(Figure.2)とは、「社会的な受け入れや、対人関係における円滑さに強調される、対人関係の形成や維持を可能とする具体的行動」と考えられる。
学校ストレス研究では、これまでに学校教育場面における不適応を予防し、心身の健康増進を目指した健康心理学的な視点から学校ストレスとメンタルヘルスとの関連を明らかにする試みが行われてきた(岡安・嶋田・丹羽・森・矢冨, 1992; 岡安・嶋田・神村・山野・坂野, 1992)。たとえば、佐藤・佐藤・高山(1988)は、社会的スキルの欠如を示す子どもは、仲間からの受け入れが悪いことを明らかにしている。つまり社会的スキルに問題が見られることは、学校場面において人間関係にまつわるさまざまなストレッサーを経験し、ストレス反応を表出したり、問題行動を出現させたりというNegativeな現象を生起させると考えることができる。
逆に、嶋田・岡安・戸ヶ崎・坂野・上里(1993)は、社会的スキルは学校ストレスに対する緩衝効果が高いことを報告し、適切な社会的スキルを獲得させることによる学校ストレスの低減の可能性を示唆している。同様に嶋田・戸ヶ崎・岡安・坂野(1996)は、社会的スキルは児童の人間関係の営みに必要であるだけでなく、個人のストレス反応をも低減させる効果があると報告している。
しかし、社会的スキルを十分に発揮することは、単にストレスを軽減させる効果があるだけではなく、戸ヶ崎・岩上・嶋田・坂野(1998)は、社会的スキルは生徒のセルフエスティームを高める効果があることを明らかにしている。
このように人間関係を柔軟かつ円滑に営み、適応を可能する社会的スキルは、対人関係で発揮されるPositiveな行動であると考えられる。
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