結 果 と 考 察


 分析の結果(Figure.5)、「肯定的期待」の主効果(F(1,744)=67.36, p<.001)が確認された。このことから「自己実現的態度」には「肯定的期待」が影響しており、肯定的期待得点が高いと、自己実現的態度得点が高いということが明らかになった。つまり、よりPositiveなイベントが生じると予測する「肯定的期待」を高く有している人ほど、自分の目標に向け、生産的な態度を持っていることがわかった。逆に「困難の不生起」の主効果が有意ではなかったことから、「自己実現的態度」には「困難の不生起」の影響は見られないということが明らかになった。また交互作用もみられなかったことから、「自己実現的態度」には、「肯定的期待」を高く有することが重要であることが示唆されたといえよう。

 つまり、自分の目標や指針を定め、その目的に向かう生産的な態度を形成することには、自分の身にPositiveなイベントが生じるというPositiveな将来予期をすることが重要であると示唆されたといえよう。Positiveな見通しを有することで、将来における自己はPositiveに評価されると考えられる。そしてそのPositiveに評価された自己は将来における充実をイメージすることを可能とすると予想される。この将来の充実をイメージすることが可能になることで、自分の目標や指針は大きく動機づけられることになり、その結果「肯定的期待」を高く有する人は自己実現的態度を形成しやすくなるのだと考えられる。また逆に「困難の不生起」の主効果が有意ではなかったことから、「自己実現的態度」には「困難の不生起」の影響は見られないということが明らかになったが、これは、自分の目標や指針を定め、その目的に向かう生産的な態度を形成することには、Negativeなことが生じないと認知するだけでは不十分で、Positiveな自分の目標や指針に関する達成や自己の効力感や成功イメージといったPositiveな見通しを持つことの必要性が示唆されたと考えられる。



自己受容についての関連

自己実現的態度についての関連

充実感についての関連

自己閉鎖性・人間不信についての関連

自己表明・対人積極性についての関連

被評価意識・対人緊張についての関連





尺度の検討

 

「肯定的期待」と「困難の不生起」の高低と自己肯定意識の諸側面について

 

「肯定的期待」と「困難の不生起」の高低と社会的スキルの諸側面について

 

「肯定的期待」と「困難の不生起」の社会的スキル・自己肯定意識に対する影響について