W. 本研究の目的 


外傷体験に間接的に曝され、共感的に関わることによって生じる援助者のストレスについての研究はFigley(1983)からはじまり、最近では日本においても、DVの援助者を対象とした研究が行われている(西・野島, 2002 ; 小西ら, 2003)。しかし、トラウマなどストレスフルな出来事の体験をした人がその内容を開示するのは専門家であるとは限らず、家族や友人など、身近な人へ開示することが多いことが示されている(久留ら, 2002)。共感疲労について、家族などの専門家でない人々を対象とした研究は外国で行われたものはいくつかあるが、日本でのそうした研究は少ない。また、これまでの研究は、戦争体験や犯罪被害などのサバイバーの家族など、直接の体験者に非常に近しい間柄の人を対象としたものが多い。しかし、これらの対象者は、身近な人に危害が及んだり、遺族に至っては家族の喪失という重大な喪失体験が生じているため、直接的な被害と等しい外傷体験になりうると考えられる。よって本研究では、ストレスフルな出来事によりストレスを被った人から開示を受けた人を対象とし、「話を聞く」こと、または援助など何らかの働きかけを行ったことにより生じた影響について検討する。対象者を開示を受けた人に絞ることによって、自分がその出来事から直接的に何らかの害を被ることがなくても、単に開示を受けるという間接的な曝露による影響について検討することが出来る。また、大和田(2003)や久留ら(2002)の研究より、開示を行う相手やソーシャルサポートの提供源は専門家より親類や友人・知人の方が多いことから、ストレスフルな出来事の開示が専門家でない一般の人々に及ぼす影響について検討することは重要であると考えられる。
以上のことより、本研究では、
@被開示者の共感性と開示への反応が被開示者のストレス反応にどのような影響を及ぼすか
A開示された出来事によって被開示者のストレス反応に違いが生じるか
B開示におけるどのような因子が被開示者のストレス反応に影響を及ぼすか
について検討することを目的とした。


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