結果
1.各尺度の因子分析結果
・性役割同一性尺度:
主因子法による因子分析を行いVarimax回転を施した結果、「男性性」(α=.84) および「女性性」(α=.83)の2因子を
抽出した。
・精神的健康尺度:
主因子法による因子分析を行いPromax回転を施した結果、「自己閉鎖性」(α=.87)、「被評価意識」(α=.84)、
「自己実現」(α=.82)、「充実感」(α=.82)の4因子を抽出した。
2.性差について
性別を独立変数、男性性、女性性、自己閉鎖性、被評価意識、自己実現、充実感をそれぞれ従属変数としてt検定を
行った結果、自己閉鎖性についてのみ、男性の平均得点が女性の平均得点よりも有意に高かった。その他では有意
な性差はみられなかった。
3.性役割同一性と精神的健康との関連
精神的健康(自己閉鎖性・被評価意識・自己実現・充実感)をそれぞれ従属変数として、
2(男性性H・L群)×2(女性性H・L群)の2要因分散分析を行った。
・自己閉鎖性について
<男性>男性性が低い人ほど対人関係が閉鎖的になりやすい傾向があることが明らかになった。
<女性>女性性が低い人ほど対人関係が閉鎖的になりやすい傾向があることが明らかになった。
・被評価意識について
<男性>男性性が低い人、あるいは女性性が高い人ほど他者からの評価に敏感になりやすい傾向があることが
明らかになった。
<女性>男性性が低い人ほど他者からの評価に敏感になりやすい傾向があることが明らかになった。
・自己実現について
<男性>男性性が高い人ほど自己実現的態度を示す傾向があることが明らかになった。
<女性>男性性が高い人、あるいは女性性が高い人ほど自己実現的態度を示す傾向があることが明らかになった。
・充実感について
<男性>男性性が高い人ほど充実している傾向があることが明らかになった。
<女性>男性性が高く、かつ女性性が高い人ほど充実している傾向があることが明らかになった。
4.自己の性の受容と性役割同一性との関連
「性の受容」を説明変数、「男性性」と「女性性」を予測変数とする単回帰分析を行った。
<男性>自己の性の受容は男性性の獲得のみに影響を与えていることが明らかになった。
<女性>自己の性の受容は女性性の獲得のみに影響を与えていることが明らかになった。
5.自己の性の受容・性役割同一性・精神的健康の関連
「性の受容」、「男性性」「女性性」、精神的健康の4つの要素を用いた階層的重回帰分析を行った。
<男性>性の受容は自己閉鎖性、被評価意識に影響を与えていることが明らかになった。このことから、男性におい
て性の受容は、自己閉鎖性と被評価意識を低減させるのに良い影響をもたらすということがいえる。性の
受容と性役割同一性の獲得を相対的に見てみると、自己閉鎖性については女性性よりも性の受容のほうが
強い影響を与えており、また被評価意識については、性の受容よりも男性性のほうが強い影響を与えている
ことが明らかになった。
<女性>性の受容は自己閉鎖性・自己実現・充実感に影響を与えていることが明らかになった。女性において性の
受容は自己閉鎖性を低減させるのに良い影響をもたらし、自己実現・充実感を高めることにも良い影響を
もたらすということがいえる。性の受容と性役割同一性の獲得を相対的に見てみると、自己閉鎖性では
性の受容よりも女性性のほうが強い影響を与えていることが明らかになった。また自己実現と充実感に
ついては、性の受容・男性性・女性性の中でも男性性からの影響が最も強いということが明らかになった。
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