問題と目的


         近年、女性の男性化や男性の女性化の進行が指摘されるようになってきた。これらの現象は「男は男らしく」「女は
        女らしく」といった性役割に関する規範意識が薄らいできていることと関連が深いと言われている。しかし、その一方
        では現代社会においても「男は仕事」「女は家庭」といった性役割ステレオタイプ的な社会通念が依然として強く
        残っていることも事実である。このような状況の中で青年はどのように「男らしさ」や「女らしさ」を獲得していく
        のだろうか。

         柏木(1973)によると、性役割同一性は自分自身の男らしさ、女らしさに関する自己評価や認識のことである。
        社会的に定義づけられた男性的性格特性・女性的性格特性が自己概念として取り入れられたとき、それを男性性
        あるいは女性性という(土肥 1995)。この男性性と女性性について、Bem(1974)は独立した2次元として存在する
        と仮定した。さらに Bem(1974)は性役割同一性に関する重要な概念として、心理的両性具有性という概念を提唱
        した。心理的両性具有性とは、男性性と女性性がともに高いことから、男女にかかわらず本来人間として備える
        べき人格特性を幅広く具有することを意味する。そのため、心理的両性具有性を形成している人は、社会的な適応
        にも優れ、また心理的に健康であるということが示唆されている。また、この心理的両性具有性の形成を促進するもの
        の一つとして、土肥(1996)は自己の性の受容を挙げている。自らの性を受容していることや、これまでの生育歴におい
        て自分が受けてきた性役割の社会化を容認できた状態であることが前提となって同性性を獲得することができ、さらに
        は異性性も獲得することが可能になるとされている。

         これらのことをふまえ、以下の三点を本研究の目的とした。
        @男性性と女性性の獲得が精神的健康にどのように関わっているのかを明らかにする
        A自己の性の受容が男性性と女性性の獲得にどのように関わっているのかを明らかにする
        B自己の性の受容、男性性・女性性の獲得、精神的健康がどのように関わっているのかを明らかにする



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