全体要約



 目的
   本研究では、2つの目的を設定した。第1に、子どもの規範意識の実態が
 どのような現状にあるのかを調べるため、自分と同年代の子どもが日常生活
  で経験する可能性のある一般的に望ましくないとされる行動に対して、どの程度
  「してはいけない」と思っているのかに加え、一般的に望ましいとされる行動
  に対してどの程度「すべきである」と思っているのかについて学年や性による
  違いも含めて明らかにすることである。
  第2に、子どもが普段生活していく上で、規範意識に大きな影響を与えるだろ
  うと考えられる8つの要因(「家庭での生活・近所の人との関わり」、「家の
  人への期待」、「先生への期待」、「大人に対するイメージ」、「学校適応感」、
  「友人関係」、「将来展望」、「生活充実感」)を生活関連意識要因とし、
  その生活関連意識と規範意識の因果関係を明らかにすることであった。


 方法
   県内の小学校88校、中学校74校 高等学校29校に在籍する小学校5、6年生、
  中学校1〜3年生及び高等学校1〜3年生を対象に質問紙調査を行った。
  (17,317名の回答が得られた。)
  質問紙の構成は、規範意識尺度30項目(小学生は21項目)と生活関連意識
  8項目群で52項目(小学生は、6項目群で30項目)を設定した。

 結果と考察
   規範意識尺度の因子分析の結果、「学校内逸脱行動」、「違法・暴力的行動」、
  「迷惑行動」、「遊び・快楽志向行動」、「向社会的行動」の5因子で構成され
  ていることが示された。学年と性によって規範意識に違いがあるのかどうか2要
  因分散分析を行ったところ、@「向社会的行動」以外の規範意識で、学年が上がる
  ほど規範意識の低いこと、A「違法・暴力行動」、及び「迷惑行動」に対する規範
  意識において、男子は学年が上がるほど意識が低くなるが、女子の低下は中1、
  または中2までであったこと、B「遊び・快楽志向行動」に対する規範意識は、
  男子よりも女子の方が許容的であったことなどが明らかになった。
   さらに、規範意識と生活関連意識との間の因果関係について、@友人関係が
  よいだけではなく、学校で適応的であること、A大人に対して正当な評価を期待
  していること、B将来展望があるだけではなく、勉強や社会的活動に意味を見出
  していることなどが高い規範意識につながる結果となった。
   本研究の結果は、今後の児童・生徒指導のあり方や方法について改善を進めていく
  上で貴重な示唆を与えるものであった。


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