1.嫉妬感情と公的自己意識

 相関分析の結果を見ると、全体では、場面2においてすべての従属変数との間に関連が見られた。さらに、男女別に見ても、男性は場面2での4変数、場面3での2変数、女性は場面2での2変数との間に関連が見られた。つまり、公的自己意識が高い者は、嫉妬場面における嫉妬感情は強く喚起されるということが明らかになった。これは、押見(1990)の結果を支持するものであった。

 また、公的自己意識Low・High群×場面×性別の3要因の分散分析の結果において、従属変数が価値ある関係を失うことへの恐れのとき、場面3では群差はないが、場面2ではLow群のほうがHigh群より価値ある関係を失うことへの恐れを強く感じていた。従属変数が怒りのとき、場面2、場面3において群差が見られ、両場面においてLow群のほうがHigh群より怒りを強く感じていた。従属変数が不安や嫉妬のとき、Low群は、恋人からの拒否の程度にあわせ場面2、場面3の順で不安や嫉妬も強くなっているが、High群は拒否の程度の強い場面3と拒否の程度の中程度な場面2との間で不安や嫉妬の強さに違いは見られず、ともに強かった。以上の結果から、公的自己意識が高い者は、嫉妬場面における嫉妬感情は強く喚起されるということが明らかになった

 これらの結果から、仮説Tは支持されたと考えられる。公的自己意識の高い者は、対人関係に関わる自己に注意を向けやすく、自己への脅威に敏感である(押見,1990)。よって、嫉妬場面においては、自己への脅威となる恋人からの拒否を敏感に感じ取り、その結果、恋人からの拒否の介在する嫉妬感情を強く喚起したと考えられる。特に、不安と嫉妬の変数について、公的自己意識の高い者は他者からの拒否に対して敏感であり、拒否の程度が中程度の時でも、拒否の程度が強い時と同様の恋人からの拒否を感じ取ってしまっていると考えられる。その結果、拒否の程度が強い時と同様の不安や嫉妬を感じていると考えられる。



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