2.嫉妬感情と私的自己意識

 相関分析の結果から、男性の場面1の自尊心喪失の恐れとの間にのみ相関が見られた。ところが、場面1というのは統制場面である。つまり、私的自己意識と嫉妬場面での嫉妬感情との関連はないということが明らかになった。これも、押見(1990)の結果を支持するものであった。

 また、私的自己意識Low・High群×場面×性別の3要因の分散分析の結果において、どの従属変数においても、群の主効果、群の交互作用は見られなかった。つまり、相関分析同様、私的自己意識と嫉妬場面での嫉妬感情との関連はないということが明らかになった

 これらの結果から、仮説Uは支持された。恋愛関係における嫉妬感情は、恋人やライバルとのやりとりの中で喚起される感情であり、典型的な対人関係感情だと言えよう。このような対人関係感情の知覚された強度を高めるのは公的自己意識であり、私的自己意識ではない(押見,1990)。私的自己意識とは、他者からは容易に知ることのできない自己の内面について注意を向けやすい傾向のことであり、他者との関係における自己とは関連がないと考えられる。故に、他者との関わりの中から喚起される嫉妬感情とは関連がなかったと考えられる



1.嫉妬感情と公的自己意識 へ         3.嫉妬感情と自尊心 へ