3.嫉妬感情と自尊心

 相関分析の結果において、全体では、場面3の自尊心喪失の恐れとの間に、性別で見ると女性では場面2と場面3の自尊心喪失の恐れとの間に関連がみれた。

 また、自尊心Low・High群×場面×性別の3要因の分散分析の結果において、自尊心喪失の恐れが従属変数のときのみ、群と場面の交互作用が見られた。つまり、拒否の程度が強い場面において、自尊心の高い者は、低い者より自尊心喪失の恐れを強く感じることが明らかになった

 これらの結果から、仮説Vは支持されなかった。むしろ、自尊心の高い人が自尊心喪失の恐れを強く感じるという逆の結果となった。坪田(2002)は、自尊感情と嫉妬感情の関連を、自尊感情をレベルと安定性とに分け、検討している。その結果、自尊感情の不安定な者ではレベルによる違いはなく、安定している者においてのみレベルの低い者のほうが高い者に比べ嫉妬を強く感じるということがわかった。しかし、自尊感情の安定性を考慮しても、本研究のような自尊心と自尊心喪失の恐れが正の関係にあるということは説明できなさそうである。本研究の結果は、調査対象者、特に自尊心の高い者が、恋人との関係の中から自尊心を強く高めているためではないかと考えられる。つまり、恋人との関係から自尊心を高めている者は、恋人からの評価が強く自己評価につながるものであり、恋人からの拒否の存在する場面において、恋人からのネガティブな評価に対し、より強く自尊心喪失の恐れを感じていると考えられる。実際に、White(1981)は、恋人との関係に代わる関係をみいだせない者は嫉妬をより感じやすいと報告している。



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