相関分析の結果から、全体および男性で場面2の不安との間に関連が見られ、女性では、場面1の不安との間に関連が見られた。
また、自尊心Low・High群×場面×性別の3要因の分散分析の結果において、不安が従属変数のとき、群と場面と性別の交互作用が見られ、場面2において社会的自尊心の高い者は、低い者より不安を弱く喚起するということが、男性にのみ見られた。そして、女性は社会的自尊心に関係なく、場面2において比較的強く不安を喚起していた。また、男性の社会的自尊心High群にのみ、場面2と場面3の間に不安の強さの差が見られた。つまり、男性の社会的自尊心の高い者は、恋人からの拒否の程度にあわせ、場面2、場面3の順で不安を強く喚起するが、男性の社会的自尊心の低い者と社会的自尊心の高低に関係なく女性は、場面2と場面3の差がなく、ともに不安を強く喚起することが明らかとなった。
これらの結果から、社会的自尊心の低い者は、高い人に比べ、嫉妬感情の中の不安のみを強く喚起している点で、仮説Wは一部支持されたと考えられる。男性において、社会的自尊心の低い者は、高い者より、嫉妬感情の下位感情である不安を強く喚起していた。また、女性では、社会的自尊心の高低に関係なく不安を比較的強く喚起していた。社会的自尊心の低い者は、対人的な不安を強く抱いている。そのため、恋人からの拒否から、不安を強く感じると考えられる。しかし、女性は、男性よりも対人関係を重要なものとする(Hoyenga & Hoyenga,1979)ため、社会的自尊心のLow群もHigh群も不安を比較的強く喚起したと考えられる。
一方、不安以外の従属変数との関連は見られなかった。社会的自尊心は、質問項目からもわかるように、初対面場面や多対一の場面での社会的な自尊心を中心に測定している。そのため、恋人という比較的よく知った他者との関わりの中では、価値ある関係の継続に関しての恐れや、自尊心への脅威、怒り、そして嫉妬には影響しなかったと考えられる。しかし、対人的な不安を抱いている社会的自尊心の低い者は、嫉妬場面においても漠然とした不安を抱いてしまったと考えられ、その結果、社会的自尊心は不安とのみ関連が見られたと考えられる。