5.性差について

 深田ら(1989)の研究では、価値ある関係を失うことへの恐れと不安の2つの従属変数について性差が見られている。しかし、本研究で性差が見られたものは、不安についてのみであった。不安には、漠然とした恐れや対象のない不安がある。本研究で、価値ある関係を失うことへの恐れにおいて性差がないことをふまえると、本研究の調査対象者が嫉妬場面で、恋人との関係の中から、「恋人との関係を失ってしまう」という具体的な不安ではなく、対人関係に関する漠然とした恐れや対象のない不安を抱いたと考えられる。そして、女性は、男性よりも対人関係を重要なものとする(Hoyenga & Hoyenga,1979)ため、女性は男性よりも強く不安を喚起したと考えられる

 先行研究では、不安や価値ある関係を失うことへの恐れ以外で性差が見られたという報告は見られない。また、本研究では、不安以外の変数において性差が見られなかった。つまり、嫉妬感情喚起の強さには性差があるが、それは嫉妬感情の中でも不安に関する感情のみで性差があり、女性のほうが不安に関する嫉妬感情を強く喚起するという可能性を示唆した



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