本研究では、嫉妬場面を恋人からの拒否によって設定し、各場面ごとに、嫉妬感情を価値ある関係を失うことへの恐れ、自尊心喪失の恐れ、怒り、不安、嫉妬という5変数により測定し、自己意識特性との関連を見てきた。その結果、どの変数においても場面の主効果が見られ、拒否の程度に応じて1次関数的な増加をしていた。つまり、どの従属変数も嫉妬感情の下位感情である可能性が示唆された。さらに、全ての変数と公的自己意識との間に関連が見られた。そして、私的自己意識との間には関連が見られなかった。このことは、嫉妬感情とい複合感情が、対人関係感情からなり、非対人関係感情を含まないことを示唆している。つまり、嫉妬感情は、恋人もしくはライバルとの関係の中で、他者からの直接的行為によって喚起される感情で構成されてるが、他者からの直接的行為でない、いわば美学的な感情は含まれていない可能性が示唆された。
そして、本研究で恋人からの拒否の程度、公的自己意識、嫉妬感情が関連しあっていることから、恋愛関係における嫉妬感情の生起プロセスには恋人からの拒否が介在している可能性が強く示唆されたと言えよう。