嫉妬感情は暴力的・復讐的行動に結びつきやすく、しばしば対人関係に悪影響を与える。この嫉妬感情は複合感情と考えられており、下位感情として怒り、うらやましさ、不安、悲しみなどがあげられている(Salovey&Rodin,1986)。
Mathes,Adams,&Davies(1985)は、嫉妬を引き起こす場面には恋人からの拒否が介在すると仮定し、恋人からの拒否の有無によって場面を操作し、恋愛関係における嫉妬に関する実験的な検討を行った。その結果、価値ある関係を失うことへの恐れは、嫉妬感情の喚起には介在しないことを示唆した。しかし、深田・坪田(1989)は、Mathes et al.(1985)の場面設定の問題点や価値ある関係を失うことへの恐れの測定法の問題点を指摘し、拒否の程度が自尊心喪失の程度、価値ある関係を失うことへの恐れ、怒り、不安などの嫉妬の下位感情にどのような影響を与えるのかを検討した。その結果、いずれの感情も拒否の程度に応じて1次関数的に増加していた。つまり、拒否の程度による価値ある関係を失うことへの恐れと、拒否の程度による自尊心喪失の恐れが対応していた。そして、自尊心喪失の程度、価値ある関係を失うことへの恐れの両変数が、嫉妬の生起プロセスに関係している可能性を示唆している。