・・・考察・・・



1.自己開示とソーシャルサポートの関連について


2.メディア意識の比較について


3.それぞれの自己開示について


4.回帰分析の結果について




































1.自己開示とソーシャルサポートの関連について

今までの対面での自己開示とソーシャルサポートの研究においては、二者の間には関連があることが指摘されていた。

本研究における検証においても、全ての群において、自己開示とソーシャルサポートには正の相関が見られた。

この事は、インターネットを媒介していても自己開示を行う事でソーシャルサポートを感じる事を証明している。  

よって、オンライン上での上手な自己開示の方法を模索していくことで、得られるソーシャルサポートは増大していくものと考えられる。






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インターネットコミュニケーションを行い、友人を作っている人々はそうでない人々に比べればメディアに対して親和感情を抱いているのではないかという仮説を検証するために、群間のメディア意識を比較した。

FTF群とCMC群のメディア意識を比較した結果、全ての下位尺度においてCMC群が有意に高くなった。

この事から、インターネットでコミュニケーションを取っている者ほど、メディアに対する親和感情、情報収集の便利さというポジティブな側面に対する意識が高まる反面メディア利用に対する困難さも強く感じるようになるといえるだろう。

インターネット上で行ったアンケートの中の自由記述においても、インターネットの便利さを強く感じると共に、インターネットコミュニケーションに対する困難さ、利用に際する不便さを指摘する記述が見られた。

一見相反するように見えるこの結果は、インターネットというメディアの特徴を捉えているのではないかと考えられる。





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3.それぞれの自己開示について


対面のみでコミュニケーションを行っている人と、インターネットでもコミュニケーションを行っている人の間では、対面のコミュニケーションに違いが見られるのではないかという疑問を検証するためにFTF群とCMC群のFTF場面での自己開示について比較した。


その結果、FTF群と、CMC群の対面での自己開示については、CMC群における興味志向的自己開示がFTF群より多い他は、大きな差は見られなかった。
この結果から、対面のみに友人を持つ群であっても双方に持つ群であっても、対面でのコミュニケーションにおける自己開示は殆ど変わらないという事が言えるだろう。

更に、CMC群のFTF場面での自己開示とCMC場面での自己開示を比較することで、対面で自己開示を行うものほど、CMCでも自己開示を行うという結果がでた。
しかしながら、CMCにおける自己開示量は対面の場合に比べると有意に少なく、対面の場合の方がより多い自己開示が為されている。

インターネット上では他のメディアに比べ自己開示について、「話しやすい」「緊張しない」と評価されるという結果が、多くの研究で一貫して得られている。
しかしながら、この結果からはたとえ話しやすくても、CMCのみでコミュニケーションを行う相手には対面の相手よりも自己開示をしない、という結果が言えるだろう。
そして、自己開示の量に注目するのならば対面でのコミュニケーションの方がより多くを伝えられると言う結果を示唆しているのではないかと考えられる。

また、先行研究においてインターネット上ではある相互作用から抜け出して別の相互作用場面へ移る事が対面の場合よりも遥かに容易である事が指摘されている。
インターネット上の付き合いは、職場・近所の付き合いとは異なりすぐさま逃げ出す事の出来る環境である。
その為、対面の友人関係に比べて深い開示を行う関係に行くまで付き合う事が少ないとも考えられる。アンケートの自由記述欄においても、開示を行う事に対して肯定的な内容の意見と、否定的な内容の意見の双方が見られた。



また、FTF群の対面との友人に対する自己開示、CMC群の対面の友人に対する自己開示、CMC群のインターネットの友人に対する自己開示の間ではそれぞれ違った傾向が見られた。

 FTF群・FTF場面の自己開示群では、興味志向的自己=外的自己>内的自己。
 CMC群・FTF場面の自己開示群では、興味志向的自己>外的自己=内的自己。
 CMC群・CMC場面の自己開示群では、興味志向的自己>内的自己>外的自己。

FTF郡においても、CMC郡においても興味志向的自己を開示する事は高い得点を示している。この事から、コミュニケーションにおいて最も話される事は自らの興味や志向であると考えられる。

インターネット上では外見的手がかりが無い為、内面的魅力が外見的手がかりに影響されずに評価されるという事が言われている。
また、対面場面とは違い、CMC場面においては自分から提示しない限り外的な自分の手がかりは全く無い事や、外的自己開示(例えば、自らの家族の話しなど)を行う事によって、インターネット犯罪の被害を受ける可能性が対面の場合に比べて危惧される事なども外的自己の開示が低い事の原因として考えられるのではないだろうか。

インターネットコミュニケーションでは内面に焦点をあてた自己開示を行うという仮設を立てたが、CMC群がCMC場面において、内的自己の方が外的自己よりも話されているという事はこの仮説の内容を質のみで言えば指示しているといえるだろう。






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4.回帰分析について


1.FTF群

分析を行った結果、心理的サポートに対しては自己開示の各下位尺度から正の因果係数が見られ、情報共有的サポートに対しては、外的・興味志向的自己開示からの正のパスが見られた。

この結果より、対面の友達のみの群での対面の友達に対して行う全ての自己開示において、相手からの心理的サポートを感じていると考えられる。CMCの結果と比較した場合、どの開示によっても心理的サポートを感じられるのはやはりノンバーバルな手がかりが多いからではないかと考えられる。

CMCにおいては、ノンバーバルな手がかりや外見などの伝達がない。それによって意図しない手がかりを相手に与えないというメリットがあるものの、社会的手がかり(言語、口調、外見、属性など)が減少することによって社会的存在感が減少し、それによって対人間の暖かさや情熱の減少すると考えられている(Walther, J.B., et al.(2002))。

対面の友人関係の場合は、CMCに比べて言語や口調、外見などといった社会的手がかりが豊富である。よって、社会的存在感は多く、対人間の暖かさを強く感じるのではないかと考えた。



2.CMC群 対面の友達

分析を行った結果、内的自己と興味志向的自己は対面のみの群と同様に心理的サポートとの間に正のパスが見られたが、外的自己については見られなかった。外的自己は同様に情報共有的サポートに対してもパスは見られなかった。

FTF群とCMC群の外的自己開示の量に有意差がなかったことから、FTF群に比べてCMC群は外的自己開示によってはソーシャルサポートが得られないという事が言えるだろう。

よって、インターネットに友人を持っている人物は、自分の身の回りの事よりも自分の内面や、自分の関心などの心理的側面や興味志向的側面を開示する事でサポートを感じていると考えられる。このことからインターネット利用者は、他者との関連性よりも自己に比重を置いているのではないかという仮説も考えられる。しかしながら、本研究においてはこれ以上の検証は不可能である為、この件に関しては再度検討してみる必要があるのではないかと考えられる。


3.CMC群 インターネットの友達

分析を行った結果、メディア意識の下位尺度のうち情報収集、MC困難は自己開示・ソーシャルサポートのどの下位尺度に対しても有意なパスがみられなかった。この事は、インターネットにおけるコミュニケーションにおいてはツールの便利さ、不便さといったような感情よりもツールに対する親和感情を持っているか否かのほうが重要である事を示唆していると考えられる。

また、インターネットの友達においては対面の2条件では見られていた内的自己開示から心理的サポートへの有意なパスが見られなかった。しかしながら数値が水準である5%を上回る6%でありはしたが、正の関連性が見られていたため、再度検討の必要があるのではないかと考えられる。

内的自己開示をすることと、情報共有的サポートの間には負のパスが見られ、自らの内的自己を開示することで逆に情報共有的サポートを受けられなくなるという、インターネット上での内的自己開示に対するネガティブな関連が示唆された。

内的自己開示と情報共有的サポートの間には、対面の二条件においては有意なパスが見られていない。この事から、情報共有といったある種道具的なサポートを望む場合には、自らの内面について触れない表面的な交流が好まれ、特にインターネットではそれがより顕著なのではないかという可能性が考えられる。

外的自己からソーシャルサポートへの関連が見られなかったのは、CMC群の対面場面と同じであり、インターネット利用者はインターネット上でも外的自己開示からソーシャルサポートを感じていない事がわかった。ただし、インターネット上では外的自己開示が最も低いという事から、インターネット上では外的自己開示を行いづらいため外的自己開示とソーシャルサポートの関連が見られなかった可能性もある。

一方、逆に大きな関連がでたのは、興味志向的自己でこの下位尺度は心理的サポートにも情報共有的サポートにも強い関連があることから、インターネットコミュニケーションを行う上で最も重要視され、相手からのサポートを感じられやすい開示は興味志向的自己開示であることが示唆された。

インターネットというのは対面の場合に比べて同趣味の相手を見つけて話すことが容易であることや、話したいときに感心のあることについて話せることなど相手との興味や志向を共有できる場が多くある。その為このような結果になったのではないかと考えられる。

また、メディア意識下位尺度の親和感情からも、各ソーシャルサポート下位尺度には関連が示されている。この事から、インターネット上でのコミュニケーションにおいてはメディアに関する親和感情を持っていることと、興味志向的自己開示を行うことによって相手からソーシャルサポートを感じる事が多いと言えるだろう。