スタッフの行動から、児童あるいは活動に対してどのように関わっているかを分析するため、スタッフの行動を「見守る」「褒める」「注意する」「仕切る」「会話する」の5つのカテゴリに分類し、各回ごとにどれだけの頻度でその行動が行われているかを調査した。各カテゴリの詳細は、以下の通りである。
@見守る:児童の行動に手や口を出さずに見ている行為。
A褒める:児童の言動を褒める行為。
B注意する:児童のよくない言動を指摘するまたは怒る行為。
C仕切る:促す、質問するなど、活動が円滑に進むような介入。
D会話する:褒める、注意する、仕切る以外の会話。
回が進むにつれてスタッフがどう変化したかを見るために、各回ごとのスタッフの行動の記述回数をカテゴリごとに算出した。その結果が、表2-2、グラフ2-1である。また、スタッフ歴による行動のちがいを見るために、第1回から第6回までのスタッフの行動の記述回数をスタッフ別に示したものが表2-3、グラフ2-2である。それぞれ括弧内は%を表している。
グラフ2-1を見ると、第2回と第6回で「仕切る」行動が多くなっていることがわかる。これは、第2回と第6回は話し合いを中心にした活動を行ったため、話し合いを円滑に進めようとスタッフが多く介入したのだと思われる。また、この2回では「褒める」行動が見られないことも特徴的である。
話し合い場面での児童の行動の特徴として、「人の話を聞かない」「スタッフを介して意見交換を行う」というものがあったが、この2回ではそれらの行動が顕著に見られ、それに対してスタッフが「注意」をしたり、話し合いを軌道に乗せるために「仕切る」ことを多く行ったのだろう。注意や仕切ることが多くなり、必然的に褒めることは疎かになってしまったと考えられる。
第4回以降「注意する」行動は全く見られなくなっている。これは、「褒める」「話す」が増えてきていることからも、児童のスキルが向上してきたためと考えられる。表2-2を見ると、グラフ2-1では一見増えているように思われる「仕切る」行動も第2回と第6回を比べると第6回の方が少なくなっていることがわかる。つまり、話し合いのスキルが向上し、「仕切る」という介入をあまりしなくても良くなった可能性が考えられる。
このデータは全体的に度数が少なく、1回行動が増えるだけでも結果が大きく左右されてしまうような結果となった。また、活動内容の影響を受けている部分が多く、この結果からだけでは、半年でのスタッフの変化を明確に示すことは難しい。
次に、表2-3、グラフ2-2を見ると、3名のスタッフの行動にはそれぞれ特徴があることがわかる。スタッフAは活動を「仕切る」ことが多く、「褒める」ことは全く行っていなかった。スタッフBは「褒める」ことが多く、スタッフCはどれも比較的バランス良く行っていた。
前にも述べたように、このデータは度数やサンプル数が少ないため、スタッフの個人差や活動の影響、あるいはグループを構成している児童の特性などによって大きく変化しうる結果だと言える。したがって、それぞれのスタッフの行動の特徴はスタッフの経験の差ではなく、個人差によるものの可能性が高い。
仮にスタッフの経験によって差が出ているのだとすれば、次のようなことが考えられるだろう。活動に関わるスタッフは大勢いるため、それぞれに役割が自然とできてくる。それによって、スタッフAは「仕切る」役を、スタッフBは「褒める」役を受け持っているが、スタッフCは経験が浅いため、まだ自分の役割をはっきりと認識していないという可能性である。しかしこれは推測の域を出ないので、今後はより多くのサンプルとデータを揃えて検証していく必要があるだろう。