スタッフの児童を見る視点、姿勢の変化を見るために、文中の語尾の使い方に注目し、その変化を見ることでスタッフ自身も気づいていない意識の変化を探っていくことにする。
ここで言う「語尾」とは、動作や感情に付加的な意味を添えるものである。これらの語尾は言い切りの形に統一した。
各語尾について各回ごとに使用割合をグラフに表した(グラフ2-3)。
回が進むにつれて使用の割合が増加しているのは、「できる、できない」「したい、しよう」の2つである。「できる、できない」は、児童のスキルについての記述が増えてきたことを示している。「したい、しよう」は、願望を表す語尾であるため、スタッフが以後の活動においてこうしたい、こうしようという前向きな姿勢を見せるようになってきたことがわかる。児童や活動の問題点・改善点が見えるようになってきたため、スタッフ自身がどのように関わっていくかを考えるようになったと推測される。前半では「ほしい」がほとんどみられなかったことも同様の理由からであろう。
逆に、回が進むにつれて使用の割合が減少しているのは、「しまう」である。「しまう」は、やったこと、起こったことに対しての後悔の感情を表しているので、これが減ったということは、失敗が減ったと言えるだろう。経験を重ねることで、自己の行動に自信を持てるようになってきたと考えられる。
以上のことより、回を重ねることによってスタッフは、児童の変化に気づきやすくなり、児童のスキルや活動をよりよくしていくために、活動をふり返るだけでなくどうしていくべきかについて考えるようになっていったと言えるだろう。しかし、それらは大きなデータの差として表れていないので、はっきりと変化したとは言い切れない。
次に、スタッフごとに各回の感想で使用されている語尾の使用割合を算出し、経験年数の差による違いを分析した。その結果を示したものがグラフ2-4である。
グラフ2-4より、スタッフCは「できる、できない」の使用頻度が極端に低いことがわかる。それに比べてスタッフA、Bは「できる、できない」を比較的頻繁に使っている。つまり、スタッフCは「スキルの変化」という視点で児童を見ることが少なく、スタッフA、Bはより「スキルの変化」に注目していたと言える。
スタッフA、Bは「なる」も多く使用しているが、これは、「児童がこうなった」という変化に注目していたからだと考えられる。また、スタッフCは「しまう」の使用頻度が高く、スタッフとしての役割にまだ慣れていないことがわかる。特に第1回での使用が多く、使用している語尾の種類も少ないことから、初めての経験に戸惑い行動に移せなかったのだと思われる。
「させる」は経験年数が増えると少なくなる傾向があるようだ。わくわくクラブの活動は、児童の自らの気づきを大切にしているため、「させる」のではなく自発的な行動を促す関わり方ができるようになってきているのだろう。
以上のことから、より多くの経験を重ねることによって、スタッフの意識が「変化」に向けられるようになり、児童が自ら学び、成長していけるような関わりを心がけるようになっていくことが明らかとなった。活動の目的や意義を理解し、それを反映した行動がとれるように成長していると言える。
スタッフの経験年数からみた変化は回ごとに見た変化よりも顕著に表れていた。このことから、半年のような短い期間ではあまり変化は見られないが、1年、2年と長い期間継続して続けることで次第に変化が見られるようになってくると言えるだろう。しかしながら、1でも述べたように、これらの分析は3名のスタッフを対象としたため、個人差が大きく表れている可能性が高い。