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1.目的
本調査で実施する質問紙で使用する、仮想的フラストレーション場面における反応例の作成。
2.方法 2-1.対象児
三重県の公立小学校に在籍する5・6年の児童28名(5年生男子9名、女子5名、6年生男子8名、女子6名)。
2-2.調査内容 ある児童AとBの仮想的フラストレーション場面を、濱口・新井(2003)、坂井・山崎(2004)、山岸(1998)などを参考に作成し、4コマ漫画によって呈示した。そして、1.児童Aは何と言うと思うか、2.児童Aはどのような気持ちだと思うか、を自由に記述させた。場面は、@本を返してもらえない、A順番がまわってきたときに横入りされる、B描いていた絵をびしょびしょにされる、C足につまずいて転ぶ、の4つであった。調査用紙は、児童AとBの性別が男子の男子用と女子の女子用の2種類を用意し、対象児の性別に一致させて配布した。
2-3.手続き 無記名方式。学級単位で、担任教師によって実施された。
2-4.調査時期 2006年9月下旬。
3.結果 場面@において、5年生男子1名がQ2に回答しなかったが、その他に記入漏れはなかった。得られた回答を句点で切り、1つの単位として数えた。回答数は、Q1・2合わせて、場面@は65、場面Aは68、場面Bは71、場面Cは71であった。各問いに対する回答数の平均は、1.2であった。
3-1.反応例の分類
予備調査で得られた対象児の反応を、他責、自責、無責、その他に分類した。Q2.児童Aはどのような気持ちだと思うか、の回答の中には、「〜と思っている。」「おこっている。」「イライラしている。」「いやな気持ち。」「悲しい気持ち。」などの回答が見られた。これらはQ1.児童Aは何と言うと思うか、という質問の回答と同様、台詞の形態を求めていた筆者の意図とは異なるものであったため、分類の対象から除外し、参考程度とした。有効回答率は86.5%であった。
分類の結果、すべての場面で他責反応が多く、自責反応と無責反応は少なかった。場面@では、他責52(81.5%)、自責0(0%)、無責1(1.5%)、その他0(0%)であった。場面Aは、他責61(89.7%)、自責0(0%)、無責1(1.5%)、その他0(0%)であった。場面Bは、他責59(83.3%)、自責(0%)、無責3(4.2%)、その他0(0%)であった。場面Cは、他責61(85.9%)、自責1(1.5%)、無責0(0%)、その他3(4.2%)であった。
3-2.項目の決定
本調査で使用する項目を、予備調査で得られた回答を元に作成した。1 ただし、今回の予備調査では、他責、自責、無責の3つの反応パターンが十分に得られなかったため、予備調査で回答頻度が多かったものに、筆者が作成した項目を加えることとした。反応例は、1つの場面について他責、自責、無責がそれぞれ4項目の計12項目となるようにした。なお、場面B・Cは、同様の場面を使用している濱口・新井(1992)、濱口(1996)、濱口・新井(2003)などが、実際に児童から集めた反応例を用いているため、それらを参考に項目を作成した。
また、本調査では、場面を1つとすることとした。理由は、自己記入式抑うつ尺度と合わせたときの項目数について現職の小学校教員に検討してもらったところ、児童の集中力を考えると仮想的フラストレーション場面は1つが妥当とされたためである。他責、自責、無責の反応パターンがより明確に見られると考えられる場面を選定するのが適切と考え、敵意があいまいな場面B・Cのうちでも、今回の予備調査で他責反応率がより低かった場面Bを使用することとした。場面Bの反応例12項目について、心理学を専攻する大学生3名に他責反応、自責反応、無責反応への分類を依頼したところ、一致率は88.9%だった。
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1なお、予備調査では、全ての場面で他責反応が多かったが、この理由として、敵意が明確な場面@とAは、児童Aがわがまま・自分勝手、ルール破りなどと思われる言動を取っていることが考えられる。このような場合に、多くの児童が他責反応を示すのは、ある程度自然と思われる。一方、場面B・Cは、敵意はあいまいなため、他責、自責、無責という反応パターンは場面@・Aより明確にあらわれやすいと考えられるが、今回は対象児が児童Aを意地悪な性格だと認知したことが考えられる。事実、得られた回答や自由記述から、特に場面B・Cで児童Aが意地悪だと認識した児童がいたことが読み取れた。この要因として、4場面とも登場人物が児童AとBであり、場面の呈示順序が@〜C(児童Aの敵意が明確なもの〜あいまいなもの)の順であったことが考えられる。
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