近年、日本は情報化、少子高齢化社会といわれる。われわれを取り囲む状況はすさまじい勢いで変化し、キレやすい小中学生が確実に増加する一方、無気力・無表情・無感動の子どもたちも目立つ。また、小中学校では子どもたちが荒れて、授業が成り立たないクラスも珍しくなくなった。
だが、今やその傾向は小中学生だけにとどまらない。幼稚園や保育園でのいじめ、学級崩壊が次々と報告され始めている。
中日新聞(2006年10月30日)によると、4歳の女児がそれまで仲のよかった女児4人から幼稚園で殴られたり、蹴られたり、つねられたりした。いじめは教諭の目の届かないトイレなどで行われ、女の子はその後も集団暴力などを受けたという。
さらに、文芸春秋(2006年12月号)によると、3歳児の学級崩壊が始まっているという。
幼児期のいじめや学級崩壊も看過できない重要な問題である。
さて、「コラージュ」とは、フランス語で「糊による貼り付け」の意味を持つ。雑誌や新聞や広告チラシから自分の好きなイメージを切り取り、糊付けするというきわめて簡単な方法で自己表現が可能となり、その過程で人の心が癒される不思議な魅力を持った技法である(杉浦、1994)。最近では、その簡便さゆえに、学校や臨床場面でも急速に適用範囲が広がりつつある。また、安全性も高い(中井、1993)。
コラージュには癒しの効果があり、日本語版POMSを用いたコラージュエクササイズを用いたグループエンカウンターと気分変容についての検討(近喰、2000)では、コラージュが緊張、不安、怒りなどを軽減することが認められた。また、コラージュとテストを併用することによって、コラージュが緊張・不安の緩和、他者に対する敵意の軽減、混乱状態の解消に効果のあることもうかがえたという報告(青木、2001)もある。
よって、安全性が高く、簡便であるといわれるコラージュ法を、遊びとして幼児に実施することは、不安や攻撃性を解消するのに、得策であると言えるだろう。子どもの中には、お絵かきよりもコラージュ法の方が、イメージとファンタジーを他者と交流させやすいという者もあるだろう。
したがって、本研究の目的は、4〜5歳の保育園児にコラージュ法を実施し、園児の本来の元気さを取り戻させたいということである。森谷(2005)は、日本の幼稚園児に対してもいろいろなところで適用されているとは、話には聞くが、まとまった報告はまだ見ていないと思う、と述べているので、本当に幼児にコラージュ法を用いることが可能か、可能だとしたらどういう工夫が必要なのかなどについても合わせて「園児のコラージュ法(実際には園児たちには「はっつけ絵遊び」と呼んでもらっている)の可能性」について検討する。