2−@:2006年12月20日・・・6名
普段の園での様子から、行動が気になった子どもと、普段の様子に問題がなく、1回目のはっつけ絵遊びが比較的スムーズにできた子どもとを同じグループにしてはっつけ絵遊びを行った。A男は場面かん黙症であったので、友達との会話はなかった。
一方、S子とC子は、絵を描くのが好きで、1回目にはっつけ絵遊びを実施した際、友達をほめたり、みんなで一緒に遊んだりできると判明したため、2人をこのグループに加えた。
A男が1回目に描いたはっつけ絵と、この回に描いたはっつけ絵を比べてみると、確実に違っているのがわかる。2回目は恐竜同士が戦った線が描かれており、A男の心の中では豊かなファンタジーが展開されたのではないかと考えられた。
また、筆者が「お絵かきと、はっつけ絵遊びと、どっちが好き?」と尋ねたところ、A男ははっつけ絵遊びが好きだと答えた。
あまり絵が得意でないA男は、今回、S子やC子にはっつけ絵を『すごいかっこいい!』と褒めてもらった。胸を張って友達に自分の絵を見せていたことから考えると、表現することに対する大きな自信になったのではないかと考えられた。
![]() |
A男の1回目のはっつけ絵 ファーストフードのアイテム。同じ形(四角形)、同じ大きさのものが多い。まだあまりファンタジーが展開されていないのではないかと考えられたが・・・・。 |
![]() |
A男の2回目のはっつけ絵 アイテムの輪郭どおりに形を切り取り、台紙にぴったりと貼り付けた。 2匹の恐竜の間には、戦ったような線が描かれ、イメージとファンタジーが充分に表出されたと考えられた。 |
2−B:2007年1月10日・・・11名
2−A、2−Bのメンバーは、はっつけ絵遊びをするうえでは特に筆者の注意が必要だと判断しなかったため、11人ずつの集団ではっつけ絵遊びを行った。
H子の1回目のはっつけ絵と、2回目のはっつけ絵とでは、ずいぶん変わったことが見受けられる。1回目では、A男と同じように、四角形で、同じ大きさのアイテムばかり切り取って貼った。しかし、2回目では、りんごのアイテムをアイテムの輪郭どおりに切り取った。このりんごのアイテムを切り取る際、アイテムの前方にほかのアイテムがあったため、りんごを完全な丸い形で切り取ることができなかったのだが、その形を活かして「アオムシがりんごを食べた」というお話を作った。H子は覚えたてのひらがなで、「おいしー!」とアオムシの近くに書き、『アオムシが「おいしー!」って言っとる!』と話した。さらに、お姫様が登場したり、太陽を描いたりと、イメージとファンタジーが充分に表出された。
![]() |
H子の1回目のはっつけ絵 A男と同じくファーストフードのアイテム。同じ形(四角形)、同じ大きさのものが多い。ボックスから選んだオレンジジュースを貼ったがまだ充分にイメージとファンタジーが展開されていない様子だった。 |
![]() |
H子の2回目のはっつけ絵 アオムシが、「おいしー!」と言っている。アイテムも輪郭どおりに切り取り、より生き生きとした表現がされている。お姫様や、太陽、星なども登場しており、充分にイメージとファンタジーが表出されていると考えられた。 |
まとめ
以上のような試行から、はっつけ絵遊びをすることで、子どもの中では豊かなイメージとファンタジーが展開され、それを通して、友達や筆者との交流が生まれ、結果として自信や満足感、受け入れられたという安心感につながり、子どもらしい元気な一面が取り戻されたといっても過言ではないだろう。