問題と目的 

 

 

○幼児の遊びの発展

        ■ 乳児期   :ひとり遊び−他者とかかわる気持ちを全く持たない

        2歳半ごろ :傍観   −他の子どもが遊んでいるのをわきからじっと見ている

        3歳ごろ   :平行遊び −同じく浮かんで同じ遊びをしているが関わりがみられない

        3,4歳ごろ  :連合遊び −子ども同士が関わりあう

        5歳ごろ   :協同遊び −幼児期における仲間遊びの完成形

 

○幼児期の友だちとの結びつき

 一つの遊びをするためにつくられるものであり、そのほとんどが遊び道具と保育者などの大人を媒介としてつくられる。そのためその関係はいたって浅く、そのときの調子によって今日はこの子、明日はあの子というように、遊び相手が移り変わることが多いのがふつうであるといわれている。

 しかし、保育実践記録のなかには、3歳児クラス後半で特定の友だちを求めて、まるで「ストーカー」のような行動をとることもめずらしくないといっているものもある。以下にその事例を紹介する。

事例:AはBを求めたとき、絵本を読んでいるBの隣に入り込んで、いっしょに同じ絵本を見ようとする。Bはうっとうしくなり、その絵本をAに渡して、自分は別の場所に行って別の絵本を読み始める。すると、Aは先ほどの絵本を放り出して、またBの隣にやって来て同じ絵本をのぞき込む(神田,2004)。

 →すれ違った友情ではあるが、遊びの内容ではなく友だちとの関係そのものを求めて子どもが動き出していることがわかる

 ⇒3歳児は友だちとの遊びが楽しいだけでなく、友だちとの関係を積極的に作り出そうと少しずつ動き始める姿もみられ始める時期である

下矢印: では
 

 


幼児が自分以外の友だちから「特定の」相手を求めるようになるのはいつごろからなのだろうか?

 

○特定の友だちを求め始める時期を明らかにする意義

幼児にとって特定の相手ができるというのは、自分にとって心地のよい存在を見つけることができるということである。

角丸四角形吹き出し: 幼児にとって遊びの広がりにつながるなど、幼児の成長のうえで大きな役割を果たすと考えられる。 

 

 

 

 


→そのため、保育実践において保育者は、幼児にとっての特別な友だちの存在を大切にし、また幼児がそのような存在を見つけられるように援助していくことが望まれる。

 →しかし、その援助は早ければよいというものではない!適切な時期に適切な援助を行うことが重要

⇒特定の友だちを求め始める時期を明らかにすることは…

 保育実践における援助を行ううえで役立つ視点を与えることができるだろう

 

○先行研究と本研究

 幼児の仲間関係に関するこれまでの研究によれば、幼児期の仲間関係の特徴は次の2つにまとめられる。

        3歳後半から特定の他者を意識するようになる

例:Hartup(1992):3歳後半から4歳までに、特定の他者を十分に意識したうえでの友だち関係が形成されることがある

  Hinde, Titmus, Easton, & Tamplin(1985):3歳後半には遊び相手が特定的になり、その関係がある程度持続的である

  Hartup, Laursen, Stewart, & Eastenson(1988):共に過ごす時間が実際に長い相手を、ソシオメトリックテストにおいて特に好きな相手と答えるようになる

        ■ 新入園児は入園後1ヵ月半から3ヵ月で遊び相手が決まってくる

例:謝(1999):新入幼稚園児(4歳児)の友だち関係の形成の研究において、6月から7月中(入園後1ヵ月半から3ヵ月)にかけて遊び相手が決まってくることを明  

らかにしている。さらに、そのなかでも特に強い結びつきを示す親友関係は、10月まで持続されることを明らかにしている。そして長期的には、「入園前の知り合 

い」よりも「入園前の友だち関係」の方がより強い影響を及ぼしていることも示している。

爆発 1: しかし!
 

 

 

 


これまでの研究のほとんどは自由時間に着目し、その時間中の関係をもった時間の総時間に占める割合から、仲良しの友だちを特定している

                    →偶然性が除かれていない

 

 

 

 

 

 

 

 


本研究では・・・

 偶然性を取り除きより正確に特定の友だちを求め始める時期をみるために、

園生活における活動間の区切り目の場面に注目する

四角形吹き出し: <活動間の区切り目の場面>
@昼食時の着席場面
A読み聞かせなど先生を中心とし自由に座る場面
(以後、全体活動導入時の着席場面とする)
Bおやつ時の着席場面
 

 

 

 

 

 

 

 


   ⇒このとき幼児はこれまでの遊びを終え、新たに一緒に座りたい子を自らの意思で求める。

→この求める相手幼児が「特定化」されてくることは、その相手がその幼児にとって「特別な」存在であることを示しているといえる。

 

○予想

(1)年少児では、9月ごろから特定の友だちを求める姿がみられるようになる

  −3歳ごろから友だちと関わろうとする意識が徐々に強くなっていく。しかし3歳前半はまだ意志疎通はできておらず、相手を意識した上での相互交渉が始まることは少ない。3歳後半から4歳ごろになると、一緒に同じような活動をする中で、友だちとの関わりを経験することが多くなる(芳賀,2000)9月ごろはクラスの大半が4歳を迎えるころである。さらに4月の新しい環境への変化から半年が経ち、周囲への意識も向いてくるころであり、友だちとの関わりの経験も豊富になるころである。

 

(2)年中児では年少児よりも早い時期から特定の友だちを求める姿がみられるようになる

  −4歳ごろからは、コミュニケーション能力が発達し、友だちの考えを理解したり、自分の意見を相手に伝えられるようになるため、意思の伝達が十分にできなかったために起こっていたいざこざは少しずつ減るようになる。そのため、他児との関わりも年少児ほど時間をかけることなく築いていけると考えられるためである。

 

(3)他児への働きかけは男児よりも女児に多くみられ、特定の友だちも女児に強くみられる

  −松山他(1984)は、友だちの名前を知っているかどうかという知名調査による3歳児における集団参加への過程の研究において、3歳児・4歳児ともに年齢に関係なく男児よりも女児の方が早い時期から他児の名前を覚えることを示している。

−澤(1984)は、幼児の社会性発達の研究において、男児よりも女児の社会性発達が著しく、友だちとの親和性(友だちの好嫌が強い、世話好きなど)について有意差を示している。

⇒これらは、男児より女児の方が、他児への関心が強いことを示していると考えられる。

 

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