全 体 要 約

 

 

 学習観とは、「学習とはどのようなものか」に対する学習者自身の認識である。人の持つ学習観がどのようなものであるかを明らかにすることは、教育、学習の問題を考える上で極めて

 

重要であるといえよう。本研究では、学習観に影響を与える要因として、文化的自己観を取り上げて、また学習観からの影響を受けているもの学習方略も取り上げて、日本と中国の大学

 

生が持っている学習観・学習方略・文化的自己観とこれらの日中間の違いを検討し、さらに学習観、学習方略と文化的自己観の間に、どのような関連があるのかを検討し、それらがどの

 

ように機能しているのかについて、日中大学生合計256名を対象として質問紙調査を実施した。

  日中大学生の学習観・学習方略・文化的自己観の違いについて検討したところ、それぞれ日中間の差異が明らかになった。文化的自己観と学習観との関連について検討したところ、

 

日本の大学生は、中国の大学生よりも、学習観が文化的自己観に影響を受ける傾向が高いということが明らかになった。そして、中国の大学生よりも日本の大学生の方が特に、相互協

 

調的文化観から影響を受ける傾向が見られた。
 
   学習観・文化的自己観と学習方略との関連について検討したところ、日中とも文化的自己観から学習方略への影響があまり見られず、学習観が学習方略に影響を与えているというこ

 

とが明らかになった。その中で、興味深いのは、中国の大学生において、「応用」の学習観から学習方略への影響が見られないことと、日本の大学生において、「主体的探求」の学習観

 

から学習方略への影響が見られないことであった。また、日本の大学生の方が中国の大学生よりも「強制」という否定的学習観から学習方略への影響を受けていることと、中国の大学

 

生の方が日本の大学生よりも「理解」の学習観から学習方略への影響を受けていることが分かった。

    以上から、学習観が文化的自己観からの影響を受けて、また規定要因として学習方略に影響を与えているということが明らかになった。
 

 

▲ 問題と目的