今後の課題と考察
異性不安尺度について
今回用いた異性不安尺度の問題点は、尺度としての信頼性や妥当性が不十分であることである。
今後は、本研究において見いだされた新しい異性不安の側面について考察を深め、
尺度としての完成度を高めていく必要がある。
また、「異性不安」という概念自体、「全般的な異性との相互作用において不安や緊張感を経験する傾向」
として、「全般的な異性」という抽象的な内容であることは問題である。
今までの先行研究において、異性友人と恋人がはっきりと区別されていることからも、
異性不安の定義においても、尺度で測定する時も、どのような異性相互作用場面かを明確に伝えることが、
今後の研究では必要になってくると考えられる。
そして、本研究でとりあげた異性不安は、米国での臨床場面での治療目的の異性不安とは違い、
青年期ゆえの混乱から生じる、一般的な不安傾向である。
つまり、異性不安が見られたためすぐに治療が必要であるというような尺度ではない。
確かに異性との相互作用における問題の治療において、重要な知見とはなるだろうが、
あくまでも青年期の特徴の一側面を捉えるものとして作成されている。
この点も踏まえた、異性不安、異性不安尺度の定義、説明が必要とされるだろう。
性役割意識尺度について
異性不安と性役割意識との関連については、本研究ではM-H-Fscale(伊藤, 1979)を用いたが、
今後は他のの測定方法を用いるなど、より厳密な関連を見いだす必要がある。
また、本研究では自身の性役割意識として、調査協力者の性について評価した性役割意識を用いたが、
自身の性役割意識と自身の性の性役割意識にズレがある可能性がある。
今後はその点についても検討し、個人の性役割意識を捉える必要がある。
総合的に
本研究では青年期といっても青年期後期に当たる大学生を調査対象としたが、
調査対象を中学生や高校生にすることで、青年期における異性不安の新たな様相がみえてくるかもしれない。
そして、本研究では性役割意識と性の受容との交互作用は見られなかったが、
ジェンダー・アイデンティティの視野を入れた研究は今後も重要であると考えられる。
考察
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