1.はじめに

創造物とは、自己の心像(イメージ)を表現しているだけでなく、その心像を表出する過程において今後、作品がどのような周りの評価を受けるかと想定した上での創造活動の産物であるとも考えられる。そのため評価活動とは切っても切り離せない関係にある。
 現在小学校で行われている創造的な活動を考察すると、図画工作科の作品制作や国語科で作文を創作する活動が活発に行われているが、多くの創造物(作品)を互いに交流する事や、評価する事が十分ではない。
 交流の面では、作文などの作品は、限られた授業時間内にすべての子どもの作品を交流する事は難しく、また、子どもたちも退屈してしまう。交流のコメントなども一部の子どものコメントしか共有できず。多くの子どもたちの意見が交流されずにいることが多いことが上げられる。
 評価に関しては、現在小学校において相互評価はあまり積極的に行われていない。それは教師が評価後のトラブルを恐れたり、発達上「小学生に正確な相互評価行うことは難しい」と言われていたりするからである。しかし、相互評価がうまくできないのは、彼らには相互評価の経験が少ないこと、評価の視点が十分に育っていないので、何をどのように評価したらいいのかということがわからないのではないかと考えられる。
 最近では、小学校現場にもコンピュータが導入され、作品にも従来の作文や工作に加えて画像や音声の加わったマルチメディアの作品が登場してきた。そのため、創造的な学習活動で行われてきたこれまでの掲示方法、交流方法を改善する必要が出てきた。

2. 研究の目的

コンピュータネットワークを用い、掲示板を使った学習実践は、高等教育では多く見られるようになってきた。また、Web上で作品を閲覧・相互評価する先行研究がある。それらは、Web上で作品にリンクを張り、掲示板に書き込ませる相互評価であったり(井上ほか 2004年、山口 2001年)、また、それらを閲覧してコメントと観点別段階評価を組み合わせ、相互評価を行っていたりしている(天野、下村ほか2003)。このようなシステムは、小学生にとっては、必ずしも使いやすいものではない。その理由の一つは、作品の閲覧と評価の入力が同一画面でないことが上げられる。したがって、小学校でマルチメディア作品を掲示して、それを評価と統合させた実践はあまり多くない。

本研究では、以下事柄を目的とする。

@ 小学生を対象として作品の閲覧と観点別相互交流を同じ画面上で行えるデジタル作品評価システムを開発する。

A 開発した作品交流システムを用いて実践し、その効果と有効性について検証する。