3. デジタル作品交流システムの開発

3.1. システム概要

本システムは、小学校の児童の創造的な活動を支援するために、子どもたちが創作した作品の交流を支援するシステムである。児童は、オンライン上に創作したデジタル作品を掲示する。さらに文字による作品のPRを加える。そして、それと同一画面でクラスメイトによる観点別、あるいは作品別に文字による交流を行い、振り返りを作品と共に記録として残す。また、作品を掲示するためには、デジタル入力が必要となるためICレコーダやデジタルカメラなどの情報機器を用いる。
本システムは、学習に参加する子どもたちが、自分の作品の思いをみんなに伝えることができ創造物が入った箱という意味をこめ「Creativity And Self Expression 以下、CASEと略)」と名付けた。

3.2. システムの特徴

 CASEは、能動的な学習を行うためのデジタル作品の交流システムである。それを可能とするため、作品入力にデジタル機器を用いた。これらの機器は、画像、映像、音声を手軽にデジタル化できるため、小学生3年生の児童も容易に扱うことができる。また、小学生は目に見えない物を扱うのは苦手であるが、コンピュータ上では音声ファイルも一つのアイコンで表され、可視化できるためうまく扱うことができるので、教師の手をほとんど借りずに作品の掲示が可能である。
本システムは、サーバーのCGI上で動作する非同期型掲示板システムである。そこで、使用されているCGIは、クライアントのWebプラウザからのリクエストに応じて音声ファイルや画像ファイル、動画ファイル、プログラムなどを扱う事ができる。そのため、クライアントにはWebブラウザとメディアプレーヤーなどの音声や画像・動画の再生環境があれば使用可能である。また、CASEは、既存のファイル掲示板と文字用の掲示板をフレームにより組み合わせることにより出来ている。左のファイル掲示板には、作品や作品PRを書き込め、右にTEXTの相互交流用の掲示板を観点の数だけ組み合わせることが出来る(図1)。

1  CASE画面

4. 適応例

開発したシステムを用い津市立栗真小学校の3年生28名を対象に物語創作の実践を行ったので説明する。

物語創作実践事例

小学校3年生、図画工作科でのCASE使用例

・ 実施期間 200773日から1016日まで

・ 教科・単元 画工作科 「粘土でお話をつくろう」

所要時間 9時限(1時限は45分)

具体的な実践手順は以下のとおりであった(全9時限)。   

@自分で物語を作りながら、そのイメージを粘土作品で表す(2時限)。

A原稿用紙に物語を書く(
1時限)。

B作品をデジタルカメラで撮影し、作品画像と作品PRを図
1の左側のファイル掲示板に掲示する(1時限)。

C掲示作品のストーリーを音読して
USB接続が可能なICレコーダを使い録音し、左側のファイル掲示板にBの作品画像と共に掲示する。さらに、作品のアピール文を文字入力する(2時限)。

D左のファイル掲示板を閲覧し、メディアプレーヤーで物語を聞き、右側の
3つの文字の掲示板で、ウインドウ別に粘土作品、物語、新しさといった3つの観点で相互評価を書き込む。(2時限)

ECASEにて投稿内容の確認、自分の作品の確認、学習の振り返りを行い記録する(
1時限)。