5. 本システムの評価

5.1. 本システムの有効性を確認するための実践
.

・方法

上記3年生28名を対象に20076月から12月までの間、物語創造実践を行った。この実践は、適応例の実践の有効性を確かめる目的のため、事前の@と事後Bのデータを比較検討する。なお、これら3つの物語創作の題は同じで、「自分でお話をつくろう」であった。

@  6月、CASEを用い、物語創作を行った。水彩画と音声で物語を表現した。観点をつけずに相互評価を行う。(以降「事前」)。

A 7月、CASEを用い物語製作を行い、粘土と音声で物語を表現した。その後、「粘土」「物語」「新しいもの」という3つの観点で相互評価を行った。           

B 11月、CASEを用い、物語創作を行った。水彩画と音声で物語を表現した。観点をつけずに相互評価を行う。(以降「事後」)。

5.2. 作品の相互評価のデータ分析
 事前、事後で行われた相互評価のデータを比較検討する。相互評価は、「友達の作品の良いところを見つけてコメントしよう」と教師が発言した。子どもたちそれぞれ2時間分のコメント数をカウントし分析した。(図2)。
・コメントの文字数

 総コメント数では事前が59コメント、事後が162コメントであった。総コメント文字数は、事前が1505文字であった。
事後が、3455文字であった。1コメント当りの平均字数は、事前が、25.50、事後が21.32であった。事後は、コメント
字数や総字数は増えているものの、平均のコメント字数は、やや減っている。「絵がきれい」のように、作品の観点
に形容詞を付けたコメントが増えたからであると考える。

・コメントの内容

 コメント内容の分類は、事前、事後共に感想が書かれているのが多い。感想は自分の思い浮かんだことを記述す
れば良いので記述が容易である。しかし、事後では、感想の割合は減ってきており、物語の内容、絵や音読、キャラ
クターについての具体的な記述が増えている。事前の後で「物語」「粘土」「新しいこと」の3つの観点で、相互評価を
行っているので、事後での書き込み内容に変化が起き、物語、絵、音読といった観点別の具体的な書き込みが多く
見られ、作品を見る視点が広がった。
   
    図2  評価コメントの分析
   図3  児童の物語データ分析
.
5.3 物語分のデータ分析
 子どもたちが創作した物語の内容を教師が数値化した。物語は、作文用紙に書かれているので、
その文字数、場面数、起承転結有無を以下の方法によりカウントし、結果を図
3にまとめた。
・文字数
 事前の作文の一人当たりの平均字数は、291.93文字であった。偏差は105.63、最小の作品は、95文字、
最多は、
403文字であった。事後の作品の平均文字数は、353.93文字で、偏差は、148.4であった。最小文字数は
156文字、最多文字数は、814字である。最小の文字数、最多の文字数、平均の文字数すべてが増加している。
偏差が増えているが、個人の文字数の変化を見てみると、たくさん書ける子どもが多くなっており全体的に増加し
た。文字数が多ければ優れた作品であるというわけではないが、文字を書くのは苦手である小学生の児童の特質に
反して、文字数が増えているので、良い物語を書こうと努力した表れと見る事ができる。
・場面数
 作文を教師が読んで場面が変わるところをカウントした。場面数が多くなればより複雑な物語と
なる。事前の場面数の平均は、
2.57場面であった。最小場面数は、1で最大場面数は4であった。事
後では平均
2.93場面で最小場面1、最大場面数5であった。ヒストグラムを見ると、場面数の変化に
ついても事後は、
4場面、5場面の増加が見られる。
・起承転結
 起承転結は通常物語の構成に良く使われる技法である。物語に起承転結があれば2、なければ1
した。平均値を取ると、
1.291.46となり事前より事後が、起承転結の平均値も増加している。
.

図 3 児童の物語文データ分析