よりよい育児支援に向けて
本研究から、テレビゲーム遊びは着実に低年齢化しており、幼児の遊びの一つとして定着しつつあることが明らかになった。このような実態がある以上、テレビゲームを排除しようとしてもそれは難しい課題であろう。しかし、テレビゲーム購入時期に近いと思われる幼児期だからこそ伝えるべきことがあると思う。本研究では母親のテレビゲーム遊びに対する賛否と幼児のテレビゲーム遊びの有無が関連していることが明らかになったが、現状は、テレビゲーム遊びに反対の姿勢を示す母親は約半数のみであった。このことからも、保育者は保護者に向けて、テレビゲーム遊びが幼児から奪ってしまう体験や、悪い影響について母親に知らせていくことも必要だと感じる。
もちろん、ただテレビゲームを幼児に与えないようにするだけでなく、既に与えている母親に対しての支援も必要である。保育者として注目したいところは、本研究において母親の育児に対する不安感や肯定感が、幼児にテレビゲーム遊びを与えるかどうかと関連していることが明らかになったことである。また、遊びのレパートリーを増やす目的でテレビゲームを購入したと回答した母親の多さである。このような結果から、ただ、テレビゲーム遊びを与えていることに対して一方的に批判しても、根本的な解決にはつながらないだろうし、逆に母親を追い詰めることにつながってしまう可能性がある。表面的な現象の裏にある心理的な部分をカバーしていく必要があると思われる。テレビゲーム遊びを与えることを一方的に批判するよりも、母親の育児に対する不安感を低め、さらに育児に対しての肯定感を高めることができるような支援が求められる。例えば、保育者は保育の指導者として、子どもとの関わり方についてのアドバイスや情報を積極的に発信たり、母親の行動の裏にある心理に寄り添って支援していくことによって、母親は幼児とよりよい関わりをすることができるようになると思う。
また、テレビゲーム遊びが子どもに与える悪影響は、テレビゲーム遊びの頻度と比例していることが多かったり、内容によって異なったりすることからも、テレビゲームとの上手なつきあい方を見つけていくことが望ましいと思われる。例えば、ゲームソフトの年齢区分マークを活用して、有害性の少ないゲームソフトを選択したり、テレビゲームを含め様々な遊びの経験を積むことによって、テレビゲーム遊びに依存しない体質づくりを心がけることも効果的であると思われる。
今後の課題
最後に本研究の今後の課題を挙げる。本研究は、自由回答形式の質問紙調査であったため、回収率も67.1%となっている。また、育児に関するナイーブな質問を含んでおり、さらに育児不安・肯定感尺度においては3件法を使用しているため、回答が極端な表現になりやすく、育児不安の高い母親や、育児肯定感の低い母親は回答しにくさを感じ、本来の回答を得られていないかもしれない。今後は、育児不安や育児肯定感に関する尺度の表現の見直しや、回答法の工夫が求められると思われる。
次に、本研究では、増田(1999)など先行研究との比較を行っている。しかしながら、テレビゲーム機、ソフトの進化は目覚ましく、本研究で使用した先行研究の扱っているテレビゲーム機と現代のテレビゲーム機とでは、差があるものとなっている。このことから、考察においての先行研究との比較が正しい比較となっているとは言い切れない部分がある。しかし、数年前の調査との比較はゲーム遊び自体の発展とも捉えることができるため、本研究においてはあえて比較を行った。
また、本研究では、テレビゲーム遊びを与える動機に注目し、テレビゲーム遊びを与えた当初の育児不安・育児肯定感を調査するために、回想形式の質問紙調査を行った。従って、テレビゲーム遊びを与えたことによって育児不安・育児肯定感が変化していた場合は現在の考えに回答が引きずられてしまっている可能性も否めない。また、テレビゲーム購入後、テレビゲーム遊びに子どもが依存してしまっているという悩みもみられるようになることから、今後の展望として、テレビゲーム遊びを幼児に与えることによって、その後、育児不安・育児肯定感がどのように変化するのか明らかにする必要があると思われる。