要旨
本研究は、育児行動、その中でも一般的には悪いと認識されている育児行動に注目し、悪いとわかっていながらもしてしまう原因を検討した。一般的には悪いと認識されている育児行動の例として「幼児にテレビゲームを与えること」を取り上げ、母親の持つ育児不安・育児肯定感との関連を明らかにすることを目的として研究を行った。3歳〜6歳の幼児を持つ母親258名を対象に、主に「幼児のテレビゲーム遊びの実態」と「テレビゲーム遊びに対する考え」と「育児不安・育児肯定感尺度(住田,1999)」で構成された質問紙調査を実施した。幼児のテレビゲーム経験率は54.7%であり、母親は幼児のテレビゲーム遊びに対して約10%が「賛成」、約40%が「どちらともいえない」、約50%が「反対」という姿勢を示していた。関連要因について分析を行った結果、(1)幼児のテレビゲーム遊びの有無に一番関連しているのは、母親のテレビゲーム遊びに対する賛否である、(2)育児不安が低くさらに育児肯定感が高い母親は、育児不安が低くさらに育児肯定感の低い母親よりも幼児にテレビゲーム遊びを与えない割合が有意に多くなる、(3)育児不安の高い場合のみ、幼児の年齢が上がるほど幼児にテレビゲーム遊びを与えやすくなる、(4)育児肯定感の高低は全体的に幼児のテレビゲーム遊びの有無と関連していたが、特に幼児のテレビゲーム遊びに対して反対の母親において、育児肯定感が高ければテレビゲームを幼児に与える割合が少なくなり、育児肯定感が低ければテレビゲームを幼児に与える割合が多くなる、という4点が明らかになった。以上のことから、幼児にテレビゲーム遊びを与える行為には、母親のテレビゲーム遊びに対する賛否が一番関連するが、育児肯定感を基盤として、育児不安感も一部関連していることが示唆された。
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