方法


実験日および実験状況:


 本実験は2008年11月下旬から12月中旬にかけてT市内にあるT保育園、S保育園2園の3歳児クラスと5歳児クラス、 計4クラスにて実施した。読み聞かせに用いた絵本は、すべてのクラスで『うえへまいりまぁす 長谷川義史作 PHP研究所』 を用いた。

対象児:

 3歳児計32名、うちT保育園16名(男子6名、女子10名)、S保育園16名(男子12名、女子4名)。5歳児計35名、うちT保育園18名(男子11名、女子7名)、S保育園17名(男子8名、女子9名)。全3歳児の平均月齢は4歳0ヶ月(年齢の範囲3歳8ヶ月〜4歳6ヶ月)、 全5歳児の平均月齢は6歳1ヶ月(年齢の範囲5歳8ヶ月〜6歳8ヶ月)であった。

手続き:

 読み聞かせの実験は3歳児クラス、5歳児クラス2園4クラスとも担任保育士の方に行っていただいた。読み聞かせ場面の 子どもたちの言動を2台のビデオカメラで撮影し、録画した。実験者は読み聞かせ中、対象児群の後方で、対象児の発話の 記録をとった。
日常の保育実践の中での読み聞かせ活動を明らかにするために、読み聞かせは、担任保育士の方に依頼し、行って いただいた。読み聞かせ場面での子どもの言動をビデオで録画し、読み聞かせ中の幼児の発話を拾い、それぞれの発話 についてその発話の向き、その発話への影響を分析カテゴリーに従って分類した。
 本研究では保育実践における集団での読み聞かせにおいて、絵本の内容と、保育者の、絵本読み聞かせにおけるその「ねらい」にも留意した。 絵本の読み方には保育者特有のスタイルがあり、また同じ保育者でも絵本によって読み方が異なり、その読み方は 保育者が絵本に対して持つ「ねらい」と対応するという(横山,2000,2003,2004)。そこで、読み聞かせのねらい を、子どもたちが、「読み手も含め共に関係を築きながら、絵本の読み聞かせを共感しあい楽しむこと」として保 育士の方に読み聞かせを実施していただいた。
 読み聞かせに用いる絵本も、そのような姿がより顕著に現れるような、子どもたちの発言がより引き出せると考 えられる絵本を選んだ。また、保育士の方には、絵本の読み聞かせ中、対象児の絵本読み聞かせに関する発言を できるだけ容認していただくようお願いした。絵本の選定については、現職の保育士の方にも相談させていただ き、実験者が選んだ。その選考理由は、以下に示すとおりである。
 また同じ絵本を繰り返し読み聞かせることにより子どもの絵本の理解が高まり、それが子どものイメージを 喚起し友達とのコミュニケーションを促す要因となっていること(小林, 1979)、読み聞かせの初回ではまず ストーリーを理解する様子が伺えられるため、同じ絵本の繰り返しの読み聞かせでは、初回よりも発話数が 増え、内容も多様になることから(横山、1975-2001)、本実験の前日に一度担任保育士の方に同じ絵本を 子どもたちに読み聞かせていただいた。その際の絵本読み聞かせの様子もビデオカメラで録画を行った。

読み聞かせに用いた絵本の選考理由

1.3歳児、5歳児とも楽しめる絵本であること。
 絵本のストーリーに繰り返しがあり、前半部分は子どもの生活に即しており、子どもたちの共感が得られやすいと考えた。
2.発話が喚起されるような内容。
 忍者・オモチャ・ロボットなど子どもに人気が高いと思われるもの、相撲とり・閻魔大王・かみさまなどユニークなも の、不思議さ、驚きを感じるものが多数登場する。「僕」「お父さん」「お母さん」がデパートに買い物に行くという お話である。「僕」たちが乗るエレベーターが、しだいに何百階まであがっていき、また普通のデパートでは とうてい売っていないものが売っているなど、奇想天外な場面があり、子どもから様々な感情を引き出すだろうと考えた。





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