結果

対面可能性の低い友人・高い友人との関係

 調査協力者と各友人の関係性を確認したところ、対面可能性の低い友人と調査協力者の関係は「小学校・中学校・高校・予備校・塾のどれかが一緒」が173名とほとんどで、対面可能性の高い友人と調査協力者の関係は「学部・サークルのどれかが一緒」が165名であった。次に各友人との関係期間の違いを確認するために、関係期間の単位を全て月に換算し、平均値と標準偏差を算出した。対面可能性の低い友人との関係期間は平均98.3ヶ月(SD55.84)であり、対面可能性の高い友人との関係期間は平均18.03ヶ月(SD13.99)であった。つづいて、対面可能性の高低を確認するために、各友人と会うために必要な時間を分に換算し、平均値と標準偏差を算出した。対面可能性の低い友人に関しては平均155.47分(SD150.72)であり、対面可能性の高い友人に関しては平均52.77分(SD97.52)であった。さらに、対面回数の違いを確認するために、各友人における過去一週間の対面回数を一年間あたりの値に換算し、平均値と標準偏差を算出した。対面可能性の低い友人とは平均22.21回(SD55.84)であり、対面可能性の高い友人とは平均188.96回(SD94.69)であった。

以上のことより、対面可能性の低い友人は大学入学前に知り合った、現在会うことが少なく困難な親しい友人で、対面可能性の高い友人は大学入学後に知り合った、現在会うことが多くたやすい親しい友人であることが確認された。


Table
 対面可能性の高低の確認






コミュニケーション内容

コミュニケーション内容15項目に対して因子分析(重みなし最小二乗法,プロマックス回転)を行った。固有値の減衰状況(6.841.151.12.94)と因子の解釈可能性から3因子を抽出した。そのうち十分な負荷量の見られなかった項目12「その友人への不満を伝える」を除いた。また、項目14「自慢する」において「項目が削除された場合のCronbachのアルファ」得点が第因子のα係数を上回ったため項目14は除き、残りの13項目について再度3因子を仮定して因子分析を行った。プロマックス回転後の最終的な因子パターンと因子間相関をTable 2に示す。

 第因子(α=.88)は「問題解決のために現実的な手助けや支援を求める」など自分が直面した問題に対して具体的な解決法などをやり取りする際に行うコミュニケーション内容の項目が高い正の負荷量を示していた。そこで「課題的コミュニケーション(以下、課題的COM)」と命名した。第因子(α=.83)は「友人関係の悩みを伝える」など悩みを友人に伝えるコミュニケーション内容の項目が高い正の負荷量を示していた。そこで「情緒的コミュニケーション(以下、情緒的COM)」と命名した。また、第因子(α=.75)は「体験した出来事について伝える」など、単なるおしゃべりと考えられる内容の項目が高い正の負荷量を示していた。そこで「コンサマトリー的コミュニケーション(以下、コンサマトリー的COM)」と命名した。以上の因子の命名は古谷・坂田(2006)を参考に行った。この結果をもとに以後の分析を進めた。





シャイネス高群と低群の分類

分析をするにあたって、まず、シャイネス得点の上位約33%の者を高群(平均61.71SD 6.1155名、下位約33%のものを低群(平均36.68SD6.4262名、その間に位置するものを中群(平均49.98SD 2.9961名とし、中群を抜いた高群・低群で比較を行うこととした。


対面でのコミュニケーション量の差

対面でのコミュニケーション量の差についてt検定を行った。その結果、対面可能性の低い友人への課題的・情緒的COMでそれぞれ有意傾向・有意でシャイネス高群よりもシャイネス低群のほうが高い得点を示していた。

対面可能性の高い友人に対しては差は有意ではなかった。

 

Table3 対面でのコミュニケーション内容得点平均値とSDおよび検定の結果




メールでのコミュニケーション量の差

 メールでのコミュニケーション量の差について検定を行った。その結果、どのコミュニケーション内容においても有意な差はみられなかった。

Table4 各友人とのメールでのコミュニケーション




 また、メール回数の差について検定を行ったところ、対面可能性の高い友人とのメール回数はシャイネス高群と低群で有意な差はみられなかったが、対面可能性の低い友人とのメール回数はシャイネス低群がシャイネス高群より有意に多かった。


Table5 対面可能性の高い友人とのメールでのコミュニケーション回数






シャイネス高群・低群と対人感情の関係

シャイネス高群・低群と対人感情の関係についてのt検定の結果、肯定的感情(t115)=2.40p.05)について、シャイネス高群よりもシャイネス低群のほうが有意に高い得点を示し、否定的感情(t100.92)=4.96p.001)について高群よりも低群のほうが有意に低い得点を示していた。

また、本研究での対人関係尺度の内的整合性は肯定的感情α.92,否定的感情α.93であった。


Table6 対人関係尺度得点平均値とSDおよび検定の結果





対面可能性の高低と携帯メールでのコミュニケーション量の関係

対面可能性の低い友人と高い友人どちらとより携帯メールでのコミュニケーションを行っているか調べるためコミュニケーション内容ごとに検定を行った。その結果をTable7に示す。

情緒的COMとコンサマトリー的COMはシャイネスの高低にかかわらずどちらも対面可能性の低い友人とより行っていた。課題的COMに関しては、シャイネス低群は有意に対面可能性の低い友人と行っていたが、シャイネス高群では対面可能性の高低で有意な差は出なかった。

対面可能性の低い友人は対面可能性の高い友人より有意に関係期間が長いことから、親しさにも差があることが予想されたため、親しさについて友人間でt 検定を行ったところ、対面可能性の低い友人のほうが対面可能性の高い友人より有意に親しいことが認められた(t177)=5.6001)。そこで、親しさの要因を排除し、コミュニケーション量を比較するために親しさを統制したデータを作成し,t検定を行った(Table 8)。その結果、シャイネス高群低群どちらも有意に対面可能性の低い友人に携帯メールでコンサマトリー的COMを行っていた。情緒的COMに関してはシャイネス高群においてのみ有意傾向で対面可能性の低い友人により行っていた。


 

Table7 メールでのコミュニケーション内容得点平均値とSDおよび検定の結果         

    


Table8 メールでのコミュニケーション内容得点平均値とSDおよび検定の結果 (親しさ統制後)



親しさの統制過程

 まず178名のデータから親しさの差分値(「対面可能性の低い友人に対する親しさ(M9.5)」−「対面可能性の高い友人に対する親しさ(M8.70」)を算出した。その結果、M0.78SD1.85)となり、対面可能性の低い友人に親しいとより感じていることがわかった。さらに差分値の得点を確認したところ、差分値の得点が2点以下で12名、1点で26名、0点で45名、1点で40名、2点以上で55名であった。そこで分布を考慮し、2点以上の協力者を除いた、2点から1点までの調査協力者123名(男性53名、女性70名、平均年齢19.6歳)の各友人について、親しさの平均値、標準偏差を算出したところ、対面可能性の低い友人においてM9.27SD1.31)、対面可能性の高い友人においてM9.41SD1.18)であった。さらに親しさが統制されたかを確認するために、親しさ得点に関して検定を行った結果、親しさの得点の差は有意ではなかった(t(122)1.39n.s.)。

 また、統制後データにシャイネス高群と低群で偏りがないかを調べたところ、シャイネス高群40名、シャイネス低群40名であった。

以上の手順により親しさを統制したデータを作成した。


 

対面可能性の低い友人とのメールコミュニケーションと対人関係の感情

 対面可能性の低い友人とのメールでのコミュニケーション内容合計得点を高群・低群にわけ、肯定的感情と否定的感情との関係を調べるためにシャイネス高群・低群ごとに検定を行った。その結果、対面可能性の低い友人とのメールをより多く行っている群が有意に肯定的感情が高かった。しかし、否定的感情において有意な差はみられなかった。シャイネス低群においてはどちらの感情においても差はみられなかった。

Table9 対面可能性の低い友人とのメール量と対人感情




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