総合考察
本研究はシャイな人にとって携帯電話のメール機能がどのような役割を果たしているかをコミュニケーション内容とコミュニケーション相手との対面可能性に注目し、対面状況と比較しながら、検討することであった。
対面可能性の高い友人とのコミュニケーション量に関しては、対面状況とメール場面ともにシャイネス高群・低群で差がみられなかった。このことから「最も親しい友人」においてはシャイな人であっても恥ずかしさを感じることがあまりないと考えられ、シャイネスによってコミュニケーション内容に差が出るのは最も親しい友人以外の、まだ気心の知れない友人や初めて出会った人においてである可能性が高いと考えた。このことはあくまでも仮説の段階であるので、今後様々な友人に対するコミュニケーションの差を調べることで検討する必要があるだろう。
対面可能性の高い友人と同じ親しさを感じているにもかかわらず、対面可能性の低い友人との対面でのコミュニケーション内容はシャイネス高群がシャイネス低群より限られるという結果であった。そのことから、シャイな人であっても共に過ごす時間が多くなることで恥ずかしさが減少され、アドバイスを求めたり悩みを相談したりすることがたやすくなる可能性が考えられる。各友人に話をする際の感情までは今回調べることができなかったため、友人に自分を打ち明けることに対する考えや、実際話をする際に思うことなどをシャイネス高群と低群で比べ、気軽さやためらいなどの感情とシャイネスの関連について検討することを今後の課題とする。
また、シャイネス高群が対面可能性の低い友人に対し、対面ではシャイネス低群より話せないことも、メールではシャイネス低群と同じだけ話せていたことから、メールは対面状況より話しやすいと考えられた。
シャイネス高群において、否定的感情と対面可能性の低い友人とのメールコミュニケーション量との間に関係は見られず、否定的感情はシャイネスという特性が持つ感情であると解釈できると考えた。それに対し、シャイネス高群で、対面可能性の低い友人とメールを多く行っている群は、肯定的感情を比較的高く持っていることが明らかになった。シャイネス低群は基本的に肯定的感情を持っているため、遠くにいる友人とのコミュニケーション量で特に肯定的感情に差はないが、シャイネス高群は普段会うことの少ない友人と交流をすることで改めて友人の存在に気付き、友人に支えられていると感じることが出来るため、このような結果が得られたと考える。このことより、携帯電話はシャイな人に友人との結びつきを実感させる効果を持っていると考える。