結果

 

 

分析対象者数

 分析の対象となった幼児57名をきょうだいの有無・入所年数により分けた結果、以下のようになった(Table2)。

 

 

全体における自己抑制状況での反応

 ここでは、対象児全体が自己抑制状況においてどのような反応を選択したのかについて検討する。対象児全体における4場面を合わせた自己抑制状況での反応結果をTable3に示した。1場面につき57名で全4場面の回答数の合計228回のうち、抑制は90回(39.5%)、協調は96回(42.1%)、非抑制は42回(18.4%)選択されていた。回答数の約8割で抑制または協調が、約2割で非抑制が選択されていることが明らかになった。

 

 以上のことから、対象児のほとんどが自己抑制状況において、自分の欲求のみを優先して相手の欲求を無視する行動はとらないと考えていることが明らかになった。

 

 

きょうだいの有無における自己抑制状況での反応の違い

 ここでは、きょうだいの有無によって自己抑制状況での反応にどのような違いがあるのかを検討する。Table4に示すように、きょうだい有り群においては、1場面につき45名で全4場面の回答数の合計180回のうち、抑制は65回(36.1%)、協調は77回(42.8%)、非抑制は38回(21.1%)選択されていた。一方、ひとりっ子群においては、1場面につき12名で全4場面の回答数の合計48回のうち、抑制は25回(52.1%)、協調は19回(39.6%)、非抑制は4回(8.3%)選択されていた。

 きょうだいの有無における自己抑制状況での反応の違いを検討するため、検定を行った。その結果、きょうだい有り群とひとりっ子群の間に有意傾向がみられた((2)=5.900, p=.05<p<.10)。そこで、残差分析を行ったところ、Table4に示すように、きょうだい有り群において非抑制が有意に多く、ひとりっ子群において抑制が有意に多いという結果が得られた。

 

 以上のことから、本実験課題において、きょうだいをもつ幼児には抑制行動をとると考えている者が少なく非抑制行動をとると考えている者が多いのに対して、ひとりっ子には抑制行動をとると考えている者が多く非抑制行動をとると考えている者が少ないということが明らかになった。

 

 

入所年数における自己抑制状況での反応の違い

 ここでは、入所年数の長短によって自己抑制状況での反応にどのような違いがあるのかを検討する。Table5に示すように、入所年数が8ヵ月以内の群においては、1場面につき36名で全4場面の回答数の合計144回のうち、抑制は63回(43.8%)、協調は59回(41.0%)、非抑制は22回(15.3%)選択されていた。一方、入所年数が9ヵ月以上の群においては、1場面につき21名で全4場面の回答数の合計84回のうち、抑制は27回(32.1%)、協調は37回(44.0%)、非抑制は20回(23.8%)選択されていた。

入所年数の長短における自己抑制状況での反応の違いを検討するため、検定を行った。その結果、Table5に示すように、入所年数8ヵ月以内の群と9ヵ月以上の群の間に有意な差はみられなかった((2)=4.026, ns)。ただし、回答数の割合で比較すると、Figure3に示すように、入所年数が8ヵ月以内の群においては抑制が、入所年数が9ヵ月以上の群においては協調と非抑制が多く選択されていた。

 

 以上のことから、本実験課題において、入所年数の長短によって自己抑制状況での反応に統計的には違いがみられないということが明らかになった。しかしながら、回答数の割合を見てみると、入所年数が8ヵ月以内の集団生活の経験が短い群においては抑制行動をとると考えている者が多い傾向にあるのに対して、入所年数が9ヵ月以上の集団生活の経験が長い群においては協調行動や非抑制行動をとると考えている者が多い傾向にあるということが明らかになった。

 

 

自己抑制の対象となる相手の人数における自己抑制状況での反応の違い

ここでは、自己抑制の対象となる相手の人数によって自己抑制状況での反応にどのような違いがあるのかを検討する。Table6に示すように、相手の人数が一人という自己抑制状況においては、1場面につき57名で計2場面の回答数の合計114回のうち、抑制は34回(29.8%)、協調は62回(54.4%)、非抑制は18回(15.8%)選択されていた。一方、相手の人数が複数という自己抑制状況においては、1場面につき57名で計2場面の回答数の合計114回のうち、抑制は56回(49.1%)、協調は34回(29.8%)、非抑制は24回(21.1%)選択されていた。

自己抑制の対象となる相手の人数における自己抑制状況での反応の違いを検討するため、検定を行った。その結果、相手が一人の状況と複数の状況の間に有意な差がみられた((2)=14.402, p<.01)。そこで、残差分析を行ったところ、Table6に示すように、相手が一人の状況において協調が有意に多く、相手が複数の状況において抑制が有意に多いという結果が得られた。

 

 以上のことから、本実験課題において、自己抑制の対象となる相手が一人の状況では抑制行動をとると考えている者が少なく協調行動をとると考えている者が多いのに対して、相手が複数の状況では抑制行動をとると考えている者が多く協調行動をとると考えている者が少ないということが明らかになった。

 

 

自己抑制状況での反応の理由づけ

1)きょうだいの有無における自己抑制状況での反応に対する理由づけ

ここでは、きょうだいの有無によって自己抑制状況での反応に対する理由づけにどのような違いがあるのかを検討する。

まず、自己抑制状況での反応に対する理由づけについて、赤木(2008)のカテゴリーを参考に以下の5つのカテゴリーを設定した(Table7)。

 

 続いて、上記の理由づけのカテゴリーに従って、自己抑制状況での反応に対する理由づけをきょうだいの有無によって分類した。すると、Table8に示すように、きょうだい有り群においては、1場面につき45名で全4場面の理由づけ回答数の合計180回のうち、「事実指摘」が20回(11.1%)、「自己の行為・心的状態」が67回(37.2%)、「他者の心的状態」が10回(6.0%)、「規範意識・ルール」が23回(12.8%)、「拒否・無関係・無回答」が60回(33.3%)みられた。一方、ひとりっ子群においては、1場面につき12名で全4場面の理由づけ回答数の合計48回のうち、「事実指摘」が4回(83.3%)、「自己の行為・心的状態」が6回(12.5%)、「他者の心的状態」が6回(12.5%)、「規範意識・ルール」が9回(18.8%)、「拒否・無関係・無回答」が23回(50.0%)みられた。

きょうだいの有無における自己抑制状況での反応に対する理由づけの違いを検討するため、検定を行った(「拒否・無関係・無回答」は除外して分析を行った)。その結果、きょうだい有り群とひとりっ子群の間で有意な差がみられた((3)=11.429, p<.01)。そこで、残差分析を行ったところ、Table8に示すように、きょうだい有り群において「自己の行為・心的状態」が有意に多く、ひとりっ子群において「他者の心的状態」と「規範意識・ルール」が有意に多いという結果が得られた。

 

以上のことから、きょうだいをもつ幼児には理由づけとして自分自身に関することを挙げる者が多いのに対して、ひとりっ子には他者の気持ちに関することと規範やルールに関することを挙げる者が多いということが明らかになった。

 

(2)きょうだいの有無における自己抑制状況での反応と理由づけとの関連

 ここでは、きょうだいの有無で有意な差がみられた「自己の行為・心的状態」「他者の心的状態」「規範意識・ルール」の3つの理由づけについて、自己抑制状況での反応とどのような関連があるのかを検討する。Table9に示すように、きょうだい有り群においては、「自己の行為・心的状態」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは21回(31.3%)、協調は28回(41.8%)、非抑制は18回(26.9%)であった。また、「他者の心的状態」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは6回(60.0%)、協調は4回(40.0%)、非抑制は0回(0.0%)であった。さらに、「規範意識・ルール」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは14回(60.9%)、協調は9回(39.1%)、非抑制は0回(0.0%)であった。

 

 一方、ひとりっ子群においては、Table10に示すように、「自己の行為・心的状態」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは2回(33.3%)、協調は3回(50.0%)、非抑制は1回(16.7%)であった。また、「他者の心的状態」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは5回(83.3%)、協調は1回(16.7%)、非抑制は0回(0.0%)であった。さらに、「規範意識・ルール」の理由づけのうち反応として抑制を選択していたのは4回(44.4%)、協調は5回(55.6%)、非抑制は0回(0.0%)であった。

 

 以上のことから、「自己の行為・心的状態」ではきょうだいの有無で自己抑制状況での反応に大きな違いはみられないが、「他者の心的状態」と「規範意識・ルール」では違いがみられることが明らかになった。特に、「他者の心的状態」の理由づけでは、ひとりっ子の方が抑制行動をとると考えているのに対し、「規範意識・ルール」ではきょうだいをもつ幼児の方が抑制行動をとると考えていることが明らかになった。