【要旨】




 本研究では、母親の結婚満足度の認知が大学生の結婚観に与える影響について、職業観との比較から検討し
た。特に、(1)大学生の結婚観と母親の結婚満足度の認知との詳細な関係を明らかにすること、(2)大学
生の結婚観には、母親の結婚満足度の認知と職業観のどちらが強く影響するかを男女それぞれにおいて明ら
かにすることの2つを目的とした。
平均年齢19.4歳の国立大学に通う大学生男女323名を対象に、結婚観尺度31項目、母親の結婚満足度尺度 19項目、職業観尺度35項目から構成された質問紙を実施した。 その結果、目的1に関して、(1)母親が夫との関係に満足していると認知したものは、結婚への期待が高く なっていたこと、(2)母親が子どもとの関係に満足していると認知したものは、結婚への期待が高くなって いたこと、(3)女子大学生において、母親が婚家との関係(夫の親戚との関係)に満足していないと認知し たものは、結婚生活に対する拘束感が高くなっていたことの3つが明らかになった。 また、目的2に関して、(1)男子大学生の結婚観には、母親の結婚満足度の認知からの影響はなく、職業観 からの影響が強かったのに対し、女子大学生の結婚観には、職業観からの影響よりも母親の結婚満足度の認知 からの影響の方が強かったこと、(2)社会的評価の高い仕事をしたいと思うことは、男子大学生では結婚へ の期待と伝統的結婚観に影響していたのに対し、女子大学生では結婚生活に対する拘束感に影響していたこと の2つが明らかになった。 以上の結果から、大学生にとって、母親の結婚満足度の認知は、結婚観を形成するうえで重要だが、それは 特に同性である女子大学生において顕著であることが示唆された。また、男女ともに社会的評価の高い仕事を したいと思うことが結婚観に影響を与えていたが、その意味は男女で大きく異なっていることが示唆された。


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