【要旨】



 本研究では、母性神話信仰と育児不安の高低による母親のソーシャル・サポート選好の違いを比較検討した。
 本研究の目的は、「母性神話信仰と育児不安の高低によって母親のソーシャル・サポート選好がどのように異なるのかを明らかにすること」と、「母性神話と育児不安の構成要素による母親のソーシャル・サポート選好の違いを明らかにすること」であった。

 1歳6ヵ月児をもつ母親102名を対象に、質問紙調査を実施した。その結果、以下の3点が明らかになった。

@母性神話を信じている母親は、信じていない母親よりも物質的サポートを必要としている
A母性神話信仰の中でも、母親の存在を絶対視する考えをもっている母親は、もっていない母親よりも物質的サポートを必要としている
B自分の育て方に不安を感じている母親で、母性の役割意識が弱い母親は、強い母親よりも物質的サポートを必要としている

 以上のことから、母性神話を信じている母親は、普段から育児に専念しているため、一時的に子どもを預かってもらい自分の時間をもつことを望んでいるということが示唆された。さらに、育て方への不安感を感じている母親においては、母性神話の考えが、サポート欲求を抑制することも示唆された。そこで、本研究からみえてくる育児支援の方針としては、母性神話を信じている母親への物質的サポートの提供をすすめること、母親の育児観を考慮して支援をすすめることの2点があげられた。

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