*ご挨拶*
アンケートにご協力いただいたお母様方へ
卒業論文の作成にあたり,お世話になった多くの方々に厚く御礼申し上げます。
予備調査と本調査の質問紙調査にご協力くださいましたお母様方に深く感謝いたします。予備調査では,お仕事と育児でお忙しい中,多くの方々に回答していただきました。調査についてのご意見や卒業論文執筆の応援のお言葉をいただき,本調査への励みになりました。
そして,本調査では,日々の育児や家事でお忙しい中,質問項目が多かったにも関わらず,多くの方々に回答していただきました。また,子育てについてのお考えや貴重なご意見をいただき,大変勉強になりました。また,応援のお言葉もたくさんいただき,強い気持ちをもって前に進むことができました。本当にありがとうございました。
以下に,研究の概要についてまとめたものを掲載いたします。また,最後に,アンケートの中で質問をいただいたことについて,一部ですが,ご質問について私が考えたことを掲載させていただきました。
◆テーマ
母親の「遊び観」と「遊び場面でのかかわり方」が「母親が楽しさを感じる場面」に与える影響
◆本研究の目的
本研究の目的は,2つでした。1つは,母親のもつ「遊び観」が「遊び場面での母親のかかわり方」に与える影響を明らかにすることでした。
2つは,その「遊び観」と「遊び場面での母親のかかわり方」が「母親が楽しさを感じる場面」に与える影響を明らかにすることでした。
◆方法
〈予備調査〉
三重県津市内の保育園10園(公立4園,私立6園)に依頼し,0〜2歳クラスの母親と親子教室に通う母親の計425名を対象として,「母親のもつ遊び観」についての質問紙調査を実施しました。回収数は325名(回収率73.9%)でした。
〈本調査〉
三重県津市内の幼稚園の未就園児クラス(国公立3園,私立3園)の母親101名,1歳6ヶ月児健診に来た母親158名,親子広場に来た母親12名を対象に「遊び観」「遊び場面でのかかわり方」「母親が楽しさを感じる場面」についての質問紙調査を実施しました。回収数は未就園児クラスで78名(回収率77.2%),1歳6ヶ月児健診で59名(回収率37.3%),親子広場で12名でした。このうち,質問紙に記入漏れや記入ミスのあったものを除き,有効回答者計117名のデータを分析対象としました。
◆結果と考察
1.母親のもつ「遊び観」について(予備調査による結果)
「遊び観」とは,母親の子どもの遊びに対するイメージのことです。この「遊び観」について,予備調査の結果,次の4つのカテゴリーに分類されました。
2.「遊び場面での母親のかかわり方」について(本調査の結果)
「遊び場面での母親のかかわり方」についても,カテゴリー分けを行った結果,以下の5つのカテゴリーに分類されました。
3.「母親が楽しさを感じる場面」について(本調査の結果)
「母親が楽しさを感じる場面」についても,カテゴリー分けを行った結果,次の4つのカテゴリーに分類されました。
4.「遊び観」と「遊び場面での母親のかかわり方」,「楽しさを感じる場面」の関連
「遊び観」と「遊び場面での母親のかかわり方」,「楽しさを感じる場面」の関連を以下の図に示しました。実線の矢印は,始点となる要因から矢印の先の要因にプラスの影響を与えています(例えば,「遊びの教育観」の遊び観をもつ母親は,遊び場面で,「受容的かかわり」をしているというような捉え方です)。また,点線の矢印は,マイナスの影響を与えています(「遊びの負担感」の遊び観をもつ母親は,「子どもらしさを感じる場面」で楽しさを感じないという捉え方です)。
5.「遊びの負担感」の遊び観に着目して
「遊びの負担感」の遊び観をもつ母親は,「子どもらしさを感じる場面」で楽しさを感じないという結果が得られましたが,「見守るかかわり」をすることにより,「子どもらしさを感じる場面」で楽しさを感じているということが明らかになりました。
毎日ではなくても,「遊びは疲れる」,「遊びは自分の自由な時間が奪われる」というような「遊びの負担感」を感じるときのある母親もいると考えられます。そして,負担を感じている母親にとって,遊び場面で楽しさを感じにくいということは予想しやすいと思われます。しかし,積極的に子どもにかかわろうとしなくても,子どもが遊んでいる姿を見守ることにより,負担感をもつ母親も楽しさを感じられているということがわかりました。これは,「子どもと遊ぶことは大切だ」と一般的によく言われていることから,負担を感じていながらも,子どものことを気にかけている母親も多いと考えられるためです。また,子どもが幼いため,積極的に遊ぶことには負担を感じていても,姿をときどき見て様子を伺っているのではないかと考えられます。
そして,子どもを見守ることから,「積み木を車に見立てる」というような子どもらしい発想に気づくことができたり,子どものこれまでと違う姿を感じ取ることができたりするため,「子どもらしさを感じる場面」で楽しさを感じているのではないかと考えられます。
6.「受容的かかわり」と「遊びの教育観」,「遊びの受容・共感」の遊び観に着目して
遊び場面でのかかわり方である「受容的かかわり」は,楽しさを感じるすべての場面に影響していることが明らかになりました。また,この「受容的かかわり」には,「遊びの教育観」と「遊びの受容・共感」の遊び観が影響していることも明らかになりました。
「受容的かかわり」は,「子どもの遊びのまねをする」,「子どもの気持ちを代弁するような言葉をかける」とあるように,子どもの気持ちを受け止め,それに応答するようなかかわりのことだと考えます。そのため,遊び場面で,子どもとのやりとりをする楽しさや子どもらしさに気づく楽しさなどにつながっていると考えられます。したがって,遊び場面での楽しさには,「受容的かかわり」が重要であると考えられます。
また,「遊びと教育を結びつけることは大切だ」などから成り立つ「遊びの教育観」や「遊びは親子のコミュニケーション手段だ」などから成り立つ「遊びの受容・共感」の遊び観は,どちらも,遊びに対する肯定的なイメージであると考えられます。そのため,子どもと遊ぶ機会を大切にしていく中で,子どもを受け止めるかかわり方が身についていったのではないかと考えられます。このことから,「遊びの教育観」と「遊びの受容・共感」の遊び観が,「受容的かかわり」につながっていると思われます。
7.今回の研究から示唆されること
<遊びに負担感を感じる母親に対して>
「遊びの負担感」の遊び観をもつ母親に対しては,「たくさんかかわってあげてください」「もっと遊んであげてください」と伝えることは,負担を高めてしまう可能性があると考えられます。そこで,本研究の結果から,「見守るかかわり」をすすめることが効果的であると考えられます。そして,子どもを「見守ること」によって,子どもらしい一面に気づくことができると考えられるため,「子どもらしさを感じる場面」で楽しさを感じることができることも明らかになりました。よって,遊びに対して負担をイメージしている母親へは,少し離れたところからでも,子どものことをそっと見守るようなかかわりをすることをすすめることが必要であると考えられます。
<子どもとの遊びを楽しむ場面を広げたいと感じている母親に対して>
子どもとの遊びを楽しむ場面を広げたいと感じている母親には,「受容的かかわり」をすすめることが効果的であると考えられます。本研究の結果から,「受容的かかわり」が楽しさを感じる場面すべてで楽しさを感じていることが示されました。そのため,「遊びの中でまねをすること」や「○○だねと子どもの気持ちを代弁するような言葉をかけること」などのように,具体的なかかわり方を伝えていく必要があると考えられます。
さらに楽しさの場面を広げたい母親に対しては,「受容的かかわり」につながる「遊びの教育観」,「遊びの受容・共感」の遊び観を取り入れることをすすめることが効果的であると考えられます。遊びに対する考え方を豊かにするためには,外に出て,他の考えにふれていくこが効果的ではないかと考えます。そのため,母親同士の交流や,子育て支援施設などで話をきくことも支援の1つとして考えられます。しかし,時間的に余裕がない母親やなかなか外に出て行くことができない母親もいると考えられます。その方には,これまでの子どもとの遊びをふり返り,新たな考え方を本研究の結果から取り入れていくことも,視野を広げる機会につながると思われます。
◆ご意見・ご質問いただいたことへの回答
◇なぜ「母親」を対象としたのか?
子育てについての調査において,お父様とお母様のように男女で差があるのか,ということも見られると考えられます。また,子育てについての調査では,子育てに携わっておられるすべての方々(お父様,お母様,ご家族など)のお考えを聞くことも大切であると考えます。
しかし,今回の研究では,その中でも「母親」に焦点を当てて調査をしていきたいと考えました。それは,卒業研究のテーマを決めるにあたって,子育て支援施設での見学や子育ての文献を読む中で,お母様方の「うまくかかわることができない」「もっと遊びを楽しみたい」というお声があることを知り,「母親の遊びに対する考え」や「母子の遊びの中でのかかわりや楽しさ」に興味を持ったためです。
そのていくために,今回の調査では,お母様に調査のご協力をお願いしたいと思っております。
そのため,「母親」に焦点を当てて調査をさせていただきました。今後,子育てに携わっておられるすべての方々への調査へとつながっていくこととなれば嬉しいなと思っております。
◇アンケートの主旨や目的がわからない…
アンケートの主旨や目的については,アンケートを回答する前にお伝えすると,考えが偏ってしまうと考えられるため,お伝えすることができませんでした。何を目的としているのかわからないまままま回答をお願いし,申し訳ありませんでした。
このホームページの中で,見ていただけると嬉しいです。
◇この調査に答えていない方の考えも大切なのでは?
時間的な理由やなかなか余裕がないために外に出られない方や,アンケートに回答されなかったお母様方のお考えについて調査することは,子育てについての調査において,大切にすべきことであると考えられます。
私自身も,調査をしていく中で,回答してくださるお母様方だけでなく,いろいろなお考えをお持ちの方はたくさんおられると感じ,その方々のお考えも知ることができたらなと思っておりました。
しかし,力が及ばず,その方々への調査をすることはできませんでした。
今後,社会に出る中で,様々なフィールドに出ていくこと,たくさんの方のお考えを知る機会を大切にすることを,私の今後の課題としたいと思っております。
他にもたくさんの方々からご意見やご感想をいただきました。今後の参考にしていきたいと思っております。
本当にありがとうございました。
なお,より詳しい結果について興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら,力が及ばないながらも作成した卒業論文本文と同じ内容である私の他のページも見ていただけると嬉しいです。
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