*要旨*


 本研究の目的は,「乳幼児期の子どもをもつ母親の『遊び観』が『遊び場面でのかかわり方』にどのように影響するかを明らかにすること」と「母親の『遊び観』と『遊び場面におけるかかわり方』が,『母親が楽しさを感じる場面』にどのように影響するかを明らかにすること」であった。

   まず,遊び観尺度を作成するため,予備調査を行った。予備調査では,0〜3歳の子どもをもつ母親325名を対象に,作成した遊び観の項目55項目の質問紙調査を実施した。
 その結果,〈遊びの教育観〉,〈遊びの効力〉,〈遊びの負担感〉,〈遊びの受容・共感〉の4因子が抽出された。

 次に,本調査では,0〜4歳の子どもをもつ母親117名を対象に,遊び観尺度23項目,「遊び場面での母親のかかわり方」27項目,「母親が楽しさを感じる場面」21項目から構成された質問紙調査を実施した。


その結果,以下の3点が明らかになった。



@〈遊びの負担感〉の遊び観をもつ母親は,〈子どもらしさを感じる場面〉では楽しさを感じないが,〈見守るかかわり〉を介すことによって,〈子どもらしさを感じる場面〉で楽しさを感じることであった。
A〈受容的かかわり〉は,楽しさを感じる場面すべてに影響しており,その〈受容的かかわり〉には,〈遊びの教育観〉や〈遊びの受容・共感〉の遊び観が関係しているということであった。
B「遊び観」と「遊び場面での母親のかかわり方」が「母親が楽しさを感じる場面」に与える影響を下位因子ごとに調べ,「母親が楽しさを感じる場面」の様々なパターンが明らかになったことであった。


 以上の結果から,大きく3つの育児支援が示唆される。


@〈遊びの負担感〉の遊び観をもつ母親には,遊び場面で〈見守るかかわり〉をすすめることである。
A遊び場面でのかかわりとして,〈受容的かかわり〉をすすめる,あるいは〈遊びの教育観〉と〈遊びの受容・共感〉の遊び観を豊かにすることをすすめることである。
B本研究から得られた関係図 (Figure 11) より,これまでの自分の「かかわり」や「楽しさを感じる場面」を振り返ることや,今までになかった新たな考えや「かかわり方」を知る1つの機会となる可能性があることである。



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