*結果*
1.尺度構成の検討
1-1.積極的先延ばし行動傾向尺度の因子分析
積極的先延ばし行動傾向尺度の16項目を対象に因子分析(最尤法、promax回転)を行った。その結果、先行研究では4因子解が抽出されていたが、本研究では、解釈可能性から3因子解が抽出された(Table1)。第1因子には、先行研究の「結果の満足度」と「圧力への好み」の8項目が高い負荷を示していた。そこで、この因子を新たに「プレッシャー管理能力」と命名した。第2因子には、先行研究の「締め切りに間に合わせる能力」と対応した4項目が高い負荷を示していた。そこで、この因子を先行研究通りに「締め切りに間に合わせる能力」と命名した。第3因子には、先行研究の「意図的な意志決定」に含まれる3項目が高い負荷量を示していた。そこで、この因子を先行研究通りに「意図的な意志決定」と命名した。なお、先行研究では「意図的な意志決定」の下位尺度は4項目で構成されていた。「私は自ら選んで、締め切り直前にほとんどの課題を終わらせる」の項目は、本研究の因子分析において、いずれの因子においても高い負荷量を示さなかったことと尺度の信頼性の検討において、先行研究通りの4項目全体のα係数は.663であったが、本研究の結果に基づいた3項目全体のα係数は.745に値が上昇したという2つの理由により、除いて分析を行うこととした。
因子分析の結果をもとに、各因子に.300以上の負荷量を示した項目の平均値を算出して、下位尺度得点とした。各下位尺度の命名は、因子の命名に従った。各下位尺度得点の平均値およびSD、Cronbachのα係数をTable2に示す。Cronbachのα係数は、Table2に示す通り、プレッシャー管理能力についてはα=.81、締め切りに間に合わせる能力についてはα=.78、意図的な意志決定についてはα=.75となった。
1-2.課題先延ばし行動傾向測定尺度
本研究では、先延ばし行動の不適応的な側面である受動的先延ばし行動傾向を測定するため、課題先延ばし行動傾向測定尺度(藤田,2005)を用いた。先行研究の尺度構成に従って各項目を合計し、それぞれの平均値を算出して、各下位尺度得点とした。下位尺度得点の平均値およびSD、Cronbachのα係数をTable2に示す。Cronbachのα係数は、Table2に示す通り、課題先延ばしについてはα=.91、約束事の遅延についてはα=.71となった。
1-3.MOAI-4
本研究では、多面的な楽観性を測定するために、MOAI-4(中西ら,2001)を用いた。先行研究の尺度構成に従って各項目を合計し、それぞれの平均値を算出して、各下位尺度得点とした。下位尺度得点の平均値およびSD、Cronbachのα係数をTable2に示す。Cronbachのα係数は、Table2に示す通り、割り切りやすさについてはα=.87、肯定的期待についてはα=.85、困難の不生起についてはα=.80、運の強さについてはα=.76となった。
1-4.GSES
本研究では、一般的な自己効力感を測定するために、GSES(坂野・東條,1986)を用いた。先行研究の尺度構成に従って各項目を合計し、それぞれの平均値を算出して、各下位尺度得点とした。下位尺度得点の平均値およびSD、Cronbachのα係数をTable2に示す。Cronbachのα係数は、Table2に示す通り、行動の積極性についてはα=.77、失敗に対する不安についてはα=.75、能力の社会的位置づけについてはα=.60となった。
1-5.評価不安尺度
本研究では、大学生における先延ばし行動の原因のひとつとして考えられている「失敗への恐れ(Solomon & Rothblum,1984)」を測定するために、大学生活不安尺度(藤井,1998)の下位尺度である評価不安を用いた。先行研究の尺度構成に従って、各項目得点を合計し、平均値を算出して、尺度得点とした。尺度得点の平均値およびSD、Cronbachのα係数をTable2に示す。Cronbachのα係数は、α=.80となった。
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