2.先延ばし行動



○先延ばし行動の2つの側面





 先延ばし行動には2つの側面があると考えられている。

 ひとつめは、先延ばし行動の不適応的な側面である受動的先延ばし行動である。研究者によって様々な定義がされているが、少なくとも行為者自身がやろうと思えばできるはずのことを「不必要」に先延ばししていることを自覚している遅延(宮元,1997)であるという点で共通している。

 もうひとつは、先延ばし行動の適応的な側面である積極的先延ばし行動である。積極的先延ばし行動は、課題を考慮した息抜きとしてあえて先延ばしを行う(小浜,2010)といったような、意図的な意志決定のもと行われる先延ばし行動であると考えられている。


 Chu & Choi(2005)は、積極的先延ばし行動傾向の者は受動的先延ばし行動傾向の者と同程度の先延ばしをしているが、目的のある時間の使い方、時間管理、自己効力感、対処スタイル、学業成績に関して、受動的先延ばし行動傾向の者よりも先延ばし行動をしない者と類似していることを示している。また、受動的先延ばし行動傾向は時間管理や自己効力感、成績との負の相関があるが、積極的先延ばし行動傾向はそれらと正の相関を示していることも報告している。


 従来の先延ばし行動研究のほとんどは、受動的先延ばし行動に着目された研究であり、積極的先延ばし行動に着目された研究は少ない。しかし、先延ばし行動研究の検討において、どちらか一方ではなく、受動的先延ばし行動傾向と積極的先延ばし行動傾向の両側面に着目することは重要であると考える。





○先延ばし行動の原因





 先延ばし行動には、上記に示すような原因があると考えられている。従来の研究の多くでは、先延ばし行動の原因として考えられている「失敗への恐れ」を反映するパーソナリティ要因との関連が検討されている。



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