3.先延ばし行動と楽観性との関連



○先延ばし行動と楽観性





 先延ばし行動研究では、様々なパーソナリティ要因との関連が検討されているが、楽観性との関連を検討した研究は少ない。しかし、いくつかの研究で明らかにされているように、先延ばし行動には課題自体や状況を楽観的に捉えることによって行われる場合があることが示唆されており(亀田・古屋,1996;小浜,2010)、パーソナリティ特性として楽観的であるか否かということは、先延ばし行動へ影響を与えていると考えられる。


 黄・兒玉(2010)は、属性的楽観性および楽観的帰属様式と特性不安、自己効力感、受動的先延ばし行動との関連について研究している。「将来、肯定的な結果が生じることを期待する傾向」と定義されている(Scheier ,Carver&Bridges,1994)属性的楽観性は、受動的先延ばし行動と直接的な正の関連と、自己効力感を通しての負の影響があると示されている。一方で、「望ましい出来事を内的・安定的・全体的な原因に帰属し、望ましくない出来事を外的・不安定的・特殊な原因に帰属する傾向である」と定義されている(Seligman,1991)楽観的帰属様式では、受動的先延ばし行動と直接的な負の関連が示されている。


 ここで注目すべき点は、属性的楽観性と楽観的帰属様式では受動的先延ばし行動傾向に与える影響が異なっているということである。すなわち、楽観性の側面によって先延ばし行動に与える影響が異なると考えられ、楽観性を多面的に測定する尺度を用いることで、楽観性のどのような側面が先延ばし行動と深く関わっているのかを明らかにすることができるだろう。





○多面的な楽観性


 安藤・中西・小平・江崎・原田・川井・小川・ア濱(2000)は、楽観性の諸側面を同時に測定するための多面的楽観性測定尺度(Multidimensional Optimism Assessment Inventory; MOAI)を作成している。また、中西・小平・安藤(2001)によって、MOAIの項目群に追加・修正が行われ、4下位尺度からなる多面的楽観性尺度(Multiple Optimism Assessment Inventory 4-subscale version;MOAI-4)が作成されている。





本研究では、MOAI-4を用いて、楽観性の多面的な側面から先延ばし行動との関連を検討することとする。



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