「継続は力なり」「ローマは一日にしてならず」という古くからの諺があるとおり、人が何かの目標に対し、課題に取り組み続けるということは個人を成長させたり、よい結果をもたらすとされている。このことは日常生活に広く当てはまり、個人の能力のひとつとして必要とされるであろう。そして、継続的な取り組みに求められるのは、「何らかの理由で課題をやりたくない」「休みたい」「遊びたい」というような、課題遂行に反する欲求をうまく制御することである。このことは我慢する能力としてとらえられる。
もし目標達成のために必要なことと自分の好きなことが異なる場合、目標達成をしようと思うならばそのために時間や労力を割く必要があり、好きなことを我慢しなければならなくなるであろう。また好きなことしたいという欲求を満たすために、自由に時間や労力を使ってしまえば、その分目標達成からは遠ざかる可能性が高くなる。これは、課題以外の欲求不満への耐性として、古くから研究が行われている(Rosentweig, 1956; Mischel, 1973; Heckhausen, 1991; et al. )。
現在、学生の前には学業における目標達成を阻害しうる多くの欲求が存在している。内閣府が平成23年度に実施した調査で青少年の携帯電話やパソコンの利用率を集計した結果によると、携帯電話の使用率は小中学生が7割、高校生がほぼ10割という報告がされている。また、パソコンの使用率に関しては小中高ともに8割を超えている。また、同年に実施された青少年のゲーム機所持率に関する調査においても、高校生が8割を上回り、小中学生に至っては9割を超えている。
さらに、大学生においても同様である。大学生は小中高生に比べて自律的に学業に取り組まなければならない。その中で特に携帯電話の使用は勿論のこと、学生のインターネット依存が危険視されている。またサークルやレジャーなどへの娯楽活動が以前に比べて自由に参加できることや、それに伴う交遊関係の増加など、主体性が問われる大学生活ならではの非学業的な欲求は測り知れない。こうした欲求を後回しにして学業へ従事できるかどうかは小中学生だけでなく、大学生にとっても重要な課題であるといえるだろう。
本研究では、即時的な楽しみを求める欲求を遅延させ、学業達成のために学習を優先させる「学業的満足遅延」ついて、大学生を対象に検討したい。同概念が学業達成においてどういう役割を果たすのか、またどのような心理学的概念や行動と影響しあうのかについて探っていきたいと考える。
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