【要旨】
本研究の目的は以下の2つであった。まず、小学校3・4年生の母子スキンシップに着目し、児童版のスキンシップ尺度を作成し、児童期におけるスキンシップの構造を明らかにすることを目的とした。そして、愛着形成と児童期におけるスキンシップの頻度の二つの観点から、子どもの社会的能力との関連について明らかにすることを目的とした。
本研究では、スキンシップを「身体の直接ふれあう身体的接触行動、または身体がふれ合っていなくても、親から子どもにはたらきかけたり、子どもと一緒に何かをしたりすることで“両者の関係が繋がっている”と子どもに実感させることのできる心的接触行動」(浜崎・森野・田口, 2008)と定義した。本研究の結果、スキンシップ尺度は「接触・交流」「遊び」「世話」の3下位尺度から構成されていることが明らかとなった。スキンシップ間の関連について、正の相関がみられ、心的接触と身体的接触は相互に関連しながらスキンシップを構成していることが明らかになった。また、スキンシップには性差があることも明らかとなった。スキンシップと愛着の全ての下位尺度において女子の方が男子よりも有意に得点が高いという結果が示された。この結果は先行研究(天野, 2003)を支持する結果となった。さらに、スキンシップには父親と母親においても差があることが明らかとなり、「遊び」と「世話」において父親の方が母親よりも有意に得点が高いという結果になった。
スキンシップと社会的能力について、「おうちの人」とのスキンシップが多い子どもほど、社会的能力が高いということが明らかとなった。さらに、父親と母親でスキンシップと社会的能力との間に異なる関連がみられた。母親とのスキンシップと社会的能力の間に相関関係がみられたが、父親とのスキンシップでは社会的能力との間に相関関係がみられなかったことから、特に母親とのスキンシップが重要である可能性が示唆された。
これまで、児童期のスキンシップと社会的能力について検討した研究は少なく、本研究においても十分な検討が行われたとは言えない。今後、祖父母などの「おうちの人」や他学年など、本研究では扱われなかった指標を用いて、児童のスキンシップと社会的能力の関連についてより詳細な検討を行うことが課題となった。