―予備調査―
  【考察】



  この調査では、本研究の実験で使用するパズルとしてどのパズルが最も適切であるのかを調べることを目的としている。FSS尺度を基に、パズルの種類によってフロー状態に差があるのかどうかを検討していく。

1.パズルの種類によってフロー体験の違いの検討


  パズルの種類別にFSS尺度の下位尺度得点を比較した。その結果、FSS尺度の下位尺度である【目標意識】のみジグソーパズルが高いということが示された。しかし、5つの下位尺度のうち4つの下位尺度に特に差がみられなかった。そのため、3種類のパズルではどれがフロー状態になりやすいなどといった差はないといえるだろう。つまり、取り組む時間や手を動かして行うかどうかによる違いはフロー体験には特に影響を与えていないと考えられる。

2.パズルに取り組む頻度とフロー体験の関連についての検討


  パズルの種類別に頻度によるフロー状態の差を検討した。その結果、3種類すべてのパズルで高い頻度でパズルに取り組む人たちの方が、フロー状態に入りやすいことがわかった。FSS尺度のすべての下位尺度において、よくパズルに取り組む人たちの方があまり取り組まない人たちよりも高い数値を示していた。このことから、高い頻度でパズルに取り組む人たちはそのパズルに取り組むことが楽しい活動であることを知っているため、頻繁に取り組んでいるのではないかと考えられる。

3.好みの程度とフロー体験の関連についての検討


  パズルの種類別に好みの程度によるフロー状態の差を検討した。その結果、ペンシルパズルとジグソーパズルにおいては、FSS尺度のすべての下位尺度で好みの程度が高い人のほうが得点の平均値が高く、パズルに対して好みの程度が高い人のほうがフロー状態に入りやすいことが示された。タングラムにおいても、3つの下位尺度で好みの程度が高い人のほうが得点の平均値が高いことが示された。しかし、2つの下位尺度では他の2種類と違い特に差がみられなかった。この理由として考えられるのは、タングラムは取り組んだ事がある人が他の2種類と比較すると圧倒的に少なく、100人近い差があった。そのため、差がみられなかったのだと考えられる。有意な結果ではないが、平均値を好みの程度が高い人と低い人を比較するとやはり高い人のほうが平均値も高かった。そのため、すべての下位尺度で好みの程度が高い人の方が得点の平均値が高かったため、やはり高い人のほうがフロー状態に入りやすいといえるだろう。これは、当たり前ではあるがやはりパズルに取り組むのが好きな人はパズルに取り組むのが楽しいから好きであり、自然とフロー状態に入りやすいと考えられるだろう。

4.まとめ


  本研究の実験において使用するパズルとして最も適切なものの検討をした。本研究の実験に協力してくれる被験者は、パズルに取り組むのが好きかどうかもパズルに取り組んだ経験があるのかどうかもわからない状況である。そのため、取り組む頻度や好みの程度によってフロー状態にあまり差がでないものを選びたい。予備調査よりパズルの種類別に頻度の高群と低群によってFSS尺度の下位尺度得点の平均値を比較すると、タングラムが一番平均値の差があった。そのため、本研究の実験でタングラムを使用した場合、頻度によってフロー状態が左右されてしまう可能性が考えられる。また、好みの程度の高群と低群によってFSS尺度の下位尺度得点の平均値を比較すると、ジグソーパズルが一番平均値の差があった。本研究の実験でジグソーパズルを使用した場合、好みの程度によってフロー状態が左右されてしまう可能性が考えられる。このようなことから、本研究の実験ではペンシルパズルの種類のパズルを使用する。ペンシルパズルの中でも知名度などを考え、ナンバープレースを使用する。

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