【要旨】




  本研究では、パズル解決課題においてフロー体験に影響を及ぼす要因について検討することと、知的活動に分類されるパズル解決課題において、フロー体験を頻繁に経験する性格特性といわれている自己目的的パーソナリティの要因を検討するために、自己効力感とBig Fiveとの関連を検討することを目的とした。

  予備調査では、本研究の実験で使用するパズルとして最も適切なものを調べるために質問紙調査を行った。その結果、パズルの種類別ではフロー状態に特に差はみられなかった。また、被験者それぞれのパズルに取り組む頻度や好みの程度についてフロー状態に差があるのかどうかも検討した。その結果、すべてのパズルにおいて頻度が高いほうがフロー状態に入りやすいことが明らかになった。そして、ペンシルパズルとジグソーパズルにおいては好みの程度が高いほうがフロー状態に入りやすいことが明らかになった。タングラムは経験者が少なく、本実験で扱うのは難しいと考えた。また、本実験では被験者がパズル課題に取り組むのが好きかどうかわからない状態で行うため、予備調査の結果に基づき、好みの程度によってフロー状態があまり左右されないナンバープレース課題を使用した。

  本実験では、事前調査として特性的自己効力感(GSE)の測定を行った。GSEの得点の高低をもとに、実験の群を課題易群と課題選択群の2つにわけた。課題前にBig Five尺度と課題固有の自己効力感(SSE)の測定を行った。そのあと、課題を30分行った後にフロー体験チェックリストとSSEの測定を行った。その結果、課題に取り組む群によるフロー状態の差はみられなかった。しかし、フロー状態には達成感が関わっているのではないかと考えられた。そして、GSEとフロー体験は関連がみられなかったが、Big Five尺度の外向性、調和性、開放性はフロー体験を促進させる、情緒不安定性は抑制させる特性であることが明らかとなった。そのため、ポジティブな物事の認知様式を備えている人は知的活動においてフロー体験をしやすいことが示唆された。


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