【要旨】




  本研究は,青年期のレジリエンスに影響をもたらす要因の特定をすることと,レジリエンスを後天的に高めるための具体的な方法を明らかにすることを目的としていた。そのため大学入学以前のいじめ被害経験と,親の楽観性,親の共感性としての親からの共有経験に着目し,それらがどのように青年期のレジリエンスに影響をもたらしているのかについて検討した。

  本研究では大学生を対象に,現在のレジリエンス,小学校期・中学校期・高校期におけるいじめ被害経験の有無,親の楽観性,親の共感性について質問紙調査を用いて尋ねた。そして,いじめ被害経験得点とレジリエンス得点の高さの関連,子どもが認知している親の楽観性得点の高さとレジリエンス得点の高さの関連,親の共感性得点の高さとレジリエンス得点の高さの関連について検討し,青年期のレジリエンスにどのように影響をもたらしているのかについて明らかにした。

  いじめ被害経験については,坂西(1995),水谷・雨宮(2015)の研究を参考に小学校期・中学校期・高校期におけるいじめ経験の有無を尋ねる項目を作成した。レジリエンスを測定する尺度としては,平野(2010)の二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」の7因子を用いて検討した。親の楽観性を測定するために外山(2012)の楽観性尺度,親の共感性を測定するために角田(1994)の共感経験尺度改訂版(EESR)の各項目の主語を「私の親は…」に修正して用いた。

  調査の結果,いじめ被害経験得点低群よりもいじめ被害経験高群の方がレジリエンス得点が低いこと,親の楽観性が子どものレジリエンス「統御力」に影響を与えていること,親からの共有経験が子どものレジリエンス「楽観性」「社交性」「行動力」に影響をもたらしていることが明らかになった。

  以上より,本研究では大学入学以前の学校生活において経験するいじめ被害経験は青年期におけるレジリエンスと関連があること,子どもが親の楽観性・共感性が高いと認知していることは子どものレジリエンスを高めることが明らかになった。

  したがって,子どもの持つレジリエンスを後天的に高めるためには,日常生活において親が子どもに対し楽観的,共感的な関わりを持つことが有効であると考えられる。


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