2 愛着スタイルと自己意識の関連についての検討

 仮説2、仮説3の検証のために、4分類した愛着スタイルと自意識尺度の関連について検討した。その結果、公的自己意識は愛着スタイルとらわれ型が、安定型、拒絶型、恐れ型に比べて有意に強く、私的自己意識はとらわれ型が、拒絶型に比べて有意に強いということが示された。これは、愛着スタイルのとらわれ型が、自分のことをより強く意識しているということを表しているだろう。このことから、仮説2は支持されたが、仮説3は支持されなかった。

 鈴木(2004)によると、他者への関心の有無が公的自意識、私的自意識のちがいとなるわけではなく、私的自己意識も他者との関連によって作り出されるものであるといわれている (Ross, 1992)。私的自己意識を高める誘導因は、内省、日記、鏡など自己に注意を向けるものであり、公的自己意識を高める誘導因は他者に観察されることや、自己像のフィードバックであるといわれている(鈴木, 2004)。このことから、他者から注目、愛情、支持を集めることに重きを置いているとらわれ型は、他者から観察された自己を日常的に意識しているために、公的自己意識も私的自己意識も強いのではないかと考えられる。

 田附(2015)によると、安定型は自らが社会において何をしているか全般が自己イメージの軸となっている傾向があることが示唆されている。このことから、安定型は他者との関係にそれほど固執していないため、私的自己意識が高いだろうという仮説は支持されなかったのではないかと考えられる。

本研究では、公的自己意識と私的自己意識との間に中程度の相関があり、公的・私的自己意識との間にはあまり相関はないとする先行研究の結果とは異なっていた。しかし、鈴木(2004)によると、Wicklundらは自覚状態に公―私の区別はないと主張し、自己意識特性を公的と私的なものに二分することには反対している。公的・私的自己意識の間に中程度の相関があった本研究の結果は、この主張を支持しているといえる。

本研究の結果から、公的自己意識、私的自己意識は愛着スタイルによってそれぞれの強さにちがいがみられるわけではなく、他者との関係に重きを置くとらわれ型が、特徴的に公的・私的自己意識がともに強く、自己をより強く意識している傾向がみられたといえる。


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