4 愛着の測定方法
上述したような愛着に関する理論をもとに、今まで多くの研究者が愛着の質の個人差を測定しようとしてきた。遠藤・田中(2005)によると、Ainsworth, Blehar, Waters & Wall (1978) は、愛着の個人差を把握するための「ストレンジ・シチュエーション法」を考案した。そしてそれを用い、乳児の愛着の質を「安定型 (Secure)」、「回避型 (Avoidant)」、「アンビヴァレント型 (Anxious/ambivalent)」の3つの愛着スタイルに大きく分類した。
また、Hazan & Shaver (1987) は、Ainsworth et al. (1978) が分類した愛着スタイルの3類型モデルをもとに、愛着スタイル質問紙 (Attachment Style Questionnaires) を作成した。これは、現在の友人や恋人、配偶者との関係性における愛着スタイル研究の先駆けとなったが、強制選択式の質問紙であったため、細かな個人特性を抽出することが難しいという課題点があった。そのため、この3種類のスタイルの記述をもとに、複数の評定項目からなる多次元的な尺度が開発された (e.g. Carnelley & Janoff - Bulman, 1992; Collins & Read, 1990 ; 詫摩・戸田, 1988)。
このような、愛着スタイルの質問紙研究の流れの中で近年注目されているのが、Bartholomew (1990) による2次元4分類モデルである。Bartholomew & Horowitz (1991) は、Ainsworthらが提唱した愛着スタイルの3類型モデルを考慮した上で、ボウルビイ (1973) の内的作業モデルの考え方に立ち返り、「自己観(自己についての内的作業モデル)」と「他者観(他者についての内的作業モデル)」がそれぞれポジティブかネガティブかの組み合わせにより愛着スタイルを4つに分類する、2次元4分類モデルを考案した。このモデルでは、自己観と他者観がともにポジティブなスタイルは「安定型 (Secure)」、自己観がポジティブで他者観がネガティブなスタイルは「拒絶型 (Disimissing)」、自己観がネガティブで他者観がポジティブなスタイルは「とらわれ型 (Preoccupied)」、最後に、自己観と他者観がともにネガティブなスタイルは「恐れ型 (Fearful)」である(図1)。また、Bartholomew & Horowitz (1991) は4つの愛着スタイルの特徴がそれぞれ記述してある文章を被験者に読ませ、その中から自身に最もよく当てはまるものを1つ強制選択させることによって被験者の愛着スタイルを測定する“関係尺度 (Relationship Questionnaire, 以下RQと略す) ”を開発した。

さらに、中尾・加藤(2004)によると、Brennan, Clark & Shaver. (1998) は、それまでに開発されていた愛着スタイル尺度にもとづき“親密な対人関係尺度 (Experiences in Close Relationship inventory, 以下ECRと略す) ”を作成した。ECRは、「見捨てられ不安 (Anxiety) 」と「親密性の回避 (Avoidance) 」の2因子が抽出され、さらに、RQ (Bartholomew & Horowitz, 1991) との相関関係の検討をもって、妥当性が確認されている。ECRの見捨てられ不安は、RQの自己観、ECRの親密性の回避はRQの他者観と対応している。
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