6 自己に関する概念

 上述したように、愛着をもとにして「自分」の一側面が形成されていると考えられるが、さらに人はそのような自分について、「自分とは○○である」という自己に関する理解をもっていると考えられる。このような自己に関する理解は、「自己概念」といわれている。

 自己概念とは、ロジャース (1951) によると、意識することのできる自己の認知が体制化されたものであり、自分の特性や能力についての認知、他者や環境との関係における自己についての認知や概念、経験や対象に関連するものとして認知されている価値の特質、目標や観念などの要素から構成されている。足立(1990)によると、自己概念とは、自我についての研究で明らかにされてきた自我の2つの側面である主体的自我と客体的自己のうちの、客体的自己に分類される。客体としての自己とは「知られる客体としての自己」であり、人が「自分のものである」ということのできるすべてのもののことである (ジェームズ, 1892)。

 自己概念は、自分を客体視することによって生じるものであり、鏡に自分が映っていることを理解したり、自分の名前を言い始めたりする2歳くらいから形成されてくると考えられている(榎本, 1998)。ブラッケン(1996)によると、自己概念は2つの「視点」と4つの「基準」によって得られた情報に基づいて評価をする過程を経て形成されていく。2つの視点とは、自分と環境との直接的なかかわりを通して情報を得る「個人的視点」と、他者の評価を観察し、それに適応することで間接的に自分の行動についての認識を得る「他者的視点」である。4つの基準とは、「絶対基準」、「内部比較基準(榎本, 1998)」、「比較基準」、および「理想基準」である。絶対基準による評価とは、自分の行動が最低限受け入れられる水準に達しているかどうかで評価することである。内部比較基準とは、ある領域での失敗や成功を、自分の総合的能力と比較することによって評価することである。比較基準による評価とは、他者を観察して得られた標準的な基準と比較することにより評価することである。理想基準による評価とは、理想や非現実的な基準と比較することにより評価することである。これらの2つの視点と4つの基準を組み合わせて、子どもの頃から自己概念を形成していくと考えられている。


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