1.はじめに


  子どもにとって生まれて初めて成立する人間関係は多くの場合,家族集団における人間関係である。草田・山田(1998)は,子どもが普段からとるコミュニケーションは家族への肯定視によって支えられていることを明らかにした。その他にも過去に行われた多くの研究において家族成員間の関係や家庭の雰囲気が子どもの対人関係におけるスキルや健康性に影響を与えることが示されている。つまり,子どもにとって家族は特性や対人関係におけるスキルが成長する基盤となると言えよう。では,その基盤となる家族とはどのようなものであろうか。本研究では子どもが成長する上で基盤となる家族を「健康な家族」として検討する。
草田・山田(1998)によると,家族が健康であるための最も重要な指標は夫婦関係のあり方である。そこで本研究において健康な家族を形成する指標として夫婦関係に着目する。現在,日本の平均寿命の延びは著しい(厚生労働省,2015)ことから,夫婦で過ごす時間は長期化していると考えられる。夫婦が結婚生活を継続しているということは,単に離婚せずに夫婦という関係を続けているという意味に過ぎない。そのため,最近では夫婦関係の質が注目されている(伊藤・相良,2015)。

  子どもにとって夫婦関係とは,実際の関係よりも子どもから見た両親の関係の方が重要な意味を持つ(Grych&fincham,1993)ことから,本研究では夫婦関係を子どもの視点から捉えることとする。そして子どもが認知する両親の夫婦関係が子どもに与える何らかの影響について検討し,家族が健康であること,すなわち夫婦関係が良好であることが子どもに及ぼす影響について明らかにする。



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