3−1.非関与群


   非関与群は「存在の全的受容・非代替性」「社会的圧力・無力感」「永続性の観念・集団志向」「物質的依存・効率性」すべての下位尺度が全体平均を下回っている群である。特徴としては,子どもから見て両親はすべての観点において認識が薄く,お互いに気にしていない印象の夫婦である。そのため,4群で4つの観点の得点を比較すると夫婦関係が良好であるとみなされる「存在の全的受容・非代替性」と夫婦関係が良くないとみなされる「社会的圧力・無力感」がどちらも同じ順位となったのだろう。更に,この群は4群のうち最も人数の分布が高い。理由として2つ考えられる。1点目は,青年期の子どもに調査をした為,20年以上一緒に生活する夫婦を評価していることから,今が当たり前の状況となっている可能性が高く,普段からあまり関係を気にしていないという点である。もう1点理由として,お互いに気にしていない夫婦関係であることは,良い・悪いどちらで捉えることも可能であることである。関与せずに無視しているようにも見えれば,長年一緒に過ごすことでお互い理解し合っており,独立しているという見方も可能であろう。  

  非関与群は「アグレッシブ」の得点が情緒的絆群と比較して高い値を示していた。更に,笑いに対する意識すべての下位尺度,「アサーティブ」が情緒的絆群よりも低く,「感情制御」が形骸的関係群よりも低い値を示していた。非関与群は,お互いに無関心であることからコミュニケーションが必要以上に行われず,家族の雰囲気が良くも悪くも起伏のないものとなるのではないかと考える。そのため,自分から発信しなければコミュニケーションはとられなくなるため,自分から強く発信し,自分の意見をしっかりと発言する「アグレッシブ」が高い値を示したのだろう。更に,コミュニケーションが必要以上に行われないことから家族内での笑いも少なく,笑うことがストレス発散になるものであるといった笑いが健康に良い影響を及ぼすという認識がなされないのではないかと考える。「感情制御」に関しては,自分や相手のネガティブな感情を隠蔽ないし解消するものである。そのため,そもそもコミュニケーションの少ない家庭内でネガティブな感情を解消する必要がないことから,このスキルは習得されないのだろうと考える。

  



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